よつき経済研究所

経済学者の森本裕です。専門は交通経済学と都市経済学です。神戸にある甲南大学で教員をしています。経済学のメインテーマである、価格=モノの値段についてコラムを書きます。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学ついても不定期で発信します。

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IR産業展に行ってきました
大阪維新の会はIR(統合型リゾート)の誘致に熱心なため、大阪はIRの第一候補と目されています。ところが、関空の欧米路線の貧弱さがIR成功の足かせになるかもしれません。

2019年5月15・16日に開催された「統合型リゾート産業展」に出席し、IR事業者から聞いてきた話のまとめです。
IR



IRの成功は、国際会議の誘致がキモ
まず、大阪がIR誘致レースの先頭を走っているのは間違いありません。日経新聞は5月15日付で、IR事業者5社がコンセプト提案をする見通し手であると報じています。


IRというとカジノというイメージが強いですが、その大部分は会議場・ホテル・ショッピングセンターです。大規模な国際会議を開催してもらわなければ全体の稼働率が上がらないわけですが、ここで問題となるのが関空の路線網です。

関空はアジア向けは充実しているものの、欧米にはあまり飛行機が飛んでいません。実際、ニューヨークなどアメリカ東海岸には直行便がありません。ヨーロッパもイタリア路線はありませんし、ロンドン行きも週4便にとどまります。

このような状況では、インパクトのある大規模会議に来てもらうのは厳しいのではないかと思われます。

関空からの直行便の少なさは問題だが、後から路線が開設されるかも
この点について、IR産業展に出展している事業者の方に質問したところ、次のような答えが返ってきました。

・実際、関空から欧米主要都市への直行便がないのは問題だ
・東京からの乗継でも大きな支障はない
・航空会社との付き合いはあるので、路線の開設を要請する
・IR自体が航空需要を喚起するので、自然と新規就航が増えることが多い

というわけなので、関空の問題は心配半分ですが、航空需要の喚起とネットワーク拡充が好循環になるのではないかという期待も湧いてきます。

サーチャージ引き下げで本当に安くなる?
原油価格の下落に合わせて、主要航空会社の燃油サーチャージも引き下げられました。

例えば、ANAとJALの欧米行きでは片道35,000円だったものが14,000円に改定されました。単純に考えて往復で21,000円安くなるはずですが、本当にそうなったのでしょうか?

航空会社は本体部分とサーチャージを一体的にとらえているフシがありますので、本体を値上げしている可能性も否定できません。

そこで、3月31日と4月1日の総額を比較してみました。




日系エアラインはしっかりと値下げ

比較対象は、大阪とニューヨークを往復する航空券です。往路を7月3日、復路を7月10日とし、前後3日間を含めて運賃総額のデータをとしました。

1枚目と2枚目の画像はそれぞれ、3月31日と4月1日に検索をして得られた運賃です。
3月31日
無題
これらを見比べてみると、ほとんどの日程で確かに21,000円安くなっています。実際、最安値で見ても147,160円から126,160円に下がっています。

海外の航空会社は実質値上げしていた

このように、日系のエアラインは信頼することができますので、サーチャージの引き下げを待ってから航空券を予約するとおトクになると言えます。

ところが、海外系を利用するときは注意が必要です。Cathay PacificやEmiratesといった海外の航空会社を調べてみたところ、サーチャージ減額を宣言していたにもかかわらず運賃総額はあまり下がっていませんでした。

カラクリを見ると、最も割安な予約クラス(Saverなど)を売り切れにして、高めのクラス(Flexなど)からしか買えないようにしているようです。同じ予約クラスで見ると値上げにはなっていませんでしたが、不誠実な印象を受けます。


2019年2月の利用はプラスを維持
関西エアポートは、2019年2月分の利用状況を発表しました。関西三空港全体では発着回数が前年同期比で6%の増加、旅客数も同5%の増加でした。
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全体として旅客数が伸びているのは好材料ですが、関空の国内線がマイナスであることと、外国人の利用が頭打ちになりつつある点が気になります。以下では詳細を見ていきましょう。



国内線はマイナス 新路線で巻き返せるか?
関空の国内線旅客数は前年比で-1%とやや減少しました。このところはプラスとマイナスを行ったり来たりで、おおよそ横ばいの状況です。

国内線はもはやLCCが主流になっていますので、どれだけLCCに目を向けてもらえるかが肝心です。

国内線で第2ターミナルを利用するのはPeachのみですが、これに対して他社は不満を抱いています。ジェットスターは第2ターミナルを利用できるようになったら増便する旨の発言をしていますので、施設の拡張が必要でしょう。

とはいえ、このところはPeachが釧路・新潟へ、ジェットスターが高知・下地島(宮古)へと新路線を展開していますので、この勢いを維持できればプラス基調に戻るのではないかと思われます。

国際線は日本人は順調だが、外国人は頭打ち
国際線の旅客数は、全体では前年比7%のプラスでした。このうち、日本人は14%増と非常に大きく伸びました。台風の被害が大きかった昨年9月を除くと、おおむね10%前後の伸びを維持しています。

ひところは日本人(とくに若者)の海外旅行離れが話題になりましたが、現在は円安の一服感とテロの鎮静化によって出国意欲が戻っているようです。

反面、外国人は4%の伸びにとどまりました。かつては二ケタはもちろん、20%以上の成長を見せていましたが、ついに踊り場入りとなった模様です。

韓国と香港は人口に対する訪日率が20%近辺にもなっているため、これ以上の増加を期待するのは難しいのかもしれません。まだまだ伸びている中国や、訪日率が低い欧米を狙っていく必要がありそうです。

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