たくさん乗ると安くなる⁉
前回の記事では、遠くへ乗り継いだ方が安くなりうるという話をしました。まぁ、常識的にはたくさん乗るほどチケットは高くなるわけですが、そうではないところが航空業界の特殊なところです。


遠くまでにチケットを安く買って、経由地点から先の部分は不搭乗にするというテクニックが一部では流行っているようです。英語では”Hidden City”とも呼ばれています。(ただし、航空会社の規定に違反するため、搭乗拒否にあるリスクがある。)

今回は、このあたりの事情について経済学の理論を使いながら考えてみましょう。前回に引き続き、ヘルシンキを拠点とするフィンランド航空を例にして、「日本-フィンランド」よりも「日本-フィンランド-スペイン」の方が安くなる理由を検討します。

直行便市場は競争相手が少ない
まず、航空業界にかけられている規制について話します。国際線の運航は各国の主権にゆだねられていて、多くの場合、2国間の運航はその国の航空会社しかできないことになっています。

つまり、「日本-フィンランド」間の直行便は、日本とフィンランドの航空会社しか飛ばせないわけです。つまり、この路線を飛ばす権利があるのは、ANA・JAL・フィンランド航空の3社だけというわけです。専門的には寡占市場といいます。

したがって、便利なサービスである「直行便市場」では競争があまり起きず、価格が高止まりします。(このメカニズムは、携帯の通信料金が安くならないのと同じですね。)

もちろん、ソウル・上海・北京・ドバイ・パリ・ローマなどの諸都市で乗り継いでヘルシンキに至る「経由便市場」もありますが、これらは不便なため、十分な競争相手とは言えません。

まとめると、日本-フィンランド間では、便利なうえに競争相手が少ないので、運賃を高くすることができるのです。
日本-フィンランド
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では、「日本-スペイン」はどうでしょうか?

先ほどと同様に、この路線に飛行機を飛ばせるのは、日本またはスペインの航空会社だけです。したがって、フィンランド航空はこの路線に就航することができません

なので、日本からスペインに移動する旅客を取り込みたければ、ヘルシンキを通る乗継便を提供するしかありません。乗継便は旅客にとっては不便なうえに時間もかかるので、高く売ることはできません。

さらに悪いことに、「乗継便市場」にはあらゆる航空会社が参入しています。例えば韓国の大韓航空やアシアナ航空は、「ソウル-日本」と「ソウル-スペイン」を飛ばしていますので、これらを組み合わせることで「日本-スペイン」の乗継便を提供することができます。

各国の航空会社がこのようにして「乗継便市場」には入ってきますので、競争が非常に激しくなります

したがって、旅客にとって不便なうえに競争相手が多いということで、運賃を非常に安くせざるをえなくなるわけです。
日本-スペイン
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このようにして「直行便市場」と「乗継便市場」をみてみると、たくさん乗る方が安くなる現象について理解できるかと思います。

一見不思議に見える現象も、経済学のレンズを通してみると原因がわかってきます。このあたりが経済学を勉強する面白さではないかと思っています。