よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

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2018年05月

関空から行く、以遠フライトの旅
以遠フライトをご存知でしょうか?直行便で海外に行くなら、日本か目的地国の航空会社を使うのが普通ですが、路線によっては第三国のエアラインを利用することも可能です。例えば、大阪-ホノルルのフライトでマレーシアのエアアジアXを利用することができます。

今回は、どのような路線が利用できるのかを中心に、以遠フライトの情報をまとめました。


以遠権とは?
通常、航空会社は本国と相手国の2国間を結んでいますが、特別な許可を得れば相手国からさらに先まで飛ぶことができるようになります。この権利を以遠権と呼んでいます。
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イメージとしては、日本の航空会社が通常の二国間フライトとしてアメリカ線を運行しながら、以遠権を使ってさらにメキシコまで飛んでいる状態です。

以遠権がなかなか認められなかったり、あるいは第三国で知名度が低いなどの理由により、以遠フライトはあまりありません。しかし、知名度の低さゆえにチケットが格安になっていることもあり、有用性はかなりあります。

関空からの以遠フライト一覧
2018年6月のスケジュールでは、関空からは次のような以遠フライトが運行されています。

・テーウェイ航空
TW311 関空10:40→グアム15:10 毎日
TW312 グアム16:10→関空18:45 毎日

・スクート
TR700 関空19:50→ホノルル09:00 月火木土
TR701 ホノルル11:00→14:25+ 月火木土

TR895 関空16:30→高雄18:45 月火木土
TR894 高雄11:30→関空15:20 月火木土

・エアアジアX
D71   関空23:25→ホノルル12:20 月水金土
D72  ホノルル16:00→関空20:25+ 月水金土

・ジェットスターアジア航空
3K724 関空12:15→台北14:25 月水木土日
3K723 台北06:55→関空10:50 月水木土日

3K722 関空17:20→台北19:25 毎日
3K721 台北12:40→関空16:30 毎日

・フィリピン航空
PR897 関空15:05→台北18:10 毎日
PR896 台北10:25→関空14:05 毎日

・エアインディア
AI315 関空14:10→香港16:50 火木土
AI314 香港08:05→関空12:40 火木土

ホノルルへはLCCのエアアジアとスクートが飛んでいるので、これらを使えば格安でハワイ旅行をすることができそうです。

また、台湾は積極的にオープンスカイを進めているので以遠フライトが充実しています。日台以外の航空会社でも、スクート・ジェットスターアジア航空・フィリピン航空と選択の幅がかなりあります。香港に行くのにエアインディアでインド気分というのもありかもしれません。

済州航空がグアム便をスタートさせるという報道も出ていますので、今度の旅行に以遠フライトを活用してみてはいかがでしょうか?



競争はあった方がいいのか?
「競争」ほど人によってイメージが異なるものもなかなかない。切磋琢磨によって新たな価値を生み出すものとしてポジティブに捉える人もいれば、逆に、蹴落とし合って軋轢をもたらすものとしてネガティブなイメージを持っている人もいるだろう。

競争には良いものと悪いものがあるようにも思えるが、ゼロサム・プラスサムを手掛かりとして競争の功罪について考えてみよう。

3行要約
・競争にはゼロサムとプラスサムの2種類がある
・プレーヤーは好むと好まざると、競争に参加せざるを得ない
・上位者は制度を調整し、競争をコントロールすべき


ゼロサムとプラスサム
まず用語の確認からであるが、「ゼロサム」とは全体としてみればプラスマイナスゼロになる状態のことを言う。2つの会社が1人の顧客を取り合っているとか、物騒なところでは国同士が領土を取り合っているといった状況である。

全体としては何も得られないのに労力だけかかっているため、ゼロサムの場合は競争にならないようにするのが望ましい。

次に、「プラスサム」とは全体として何かが生み出されている状態である。より良い大学に入るための受験勉強や新製品の開発競争といったものが該当する。

不合格であっても学力は向上するし、切磋琢磨してよい製品が生み出されることもある。このように、プラスサムの場合は得るものがあるため、望ましい競争といえる。

上位者はルール策定に責任を負う

競争には望ましいものと望ましくないものがあることが分かったが、これは、あくまでも社会全体としてのことである。当事者にとっては、勝てば得るものがある(負けると失うものがある)ので、競争に巻き込まれざるをえない

したがって、状況をコントロールできる上位者(政策立案者・ルールの作成者)は責任が重大だ。ゼロサムならば競争が起きないようにしなければならないし、プラスサムならば競争を促すようにしなければならない。

ふるさと納税の罪
上位者がルール作りに失敗した事例として、ふるさと納税をめぐる問題を紹介しよう。ふるさと納税とは、納税者が住民税の一定部分の納付先を自由に決めることができる仕組みで、2008年にスタートした制度である。(注1)

各自治体はより多くの税を集めるために豪華な返礼品を用意し、市民の関心を引くことに躍起になっている。「さとふる」などのまとめサイトを見れば、松阪牛などの品が用意されていることが分かる。

さて、全体としては定額の税をめぐって自治体が競争をしているわけであるが、当然、この競争は「ゼロサム」である。自治体がいかに知恵を絞ろうとも、新たな価値が何ら生み出されるわけでもなく、他の自治体から税金を奪ってきているだけである。(注2)

むしろ、返礼品の分だけ政策に利用できる財源が減ってしまうので、「マイナスサム」ということもできる。全体としては極めて不合理な状況であるが、各自治体にとっては競争に参加するのが合理的であるから、税の取り合いは激しさを増すばかりだ。実際、2017年度には3000億円を超える見込みだ。
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出所:日本経済新聞電子版(2018年5月11日)

全体としてマイナスにしかならない仕組みを作ってしまった総務省の罪は重く、ふるさと納税は即刻廃止すべき制度であるといえる。

注1:実際には自治体に対する寄付であり、自己負担分2000円を除いたものが住民税から税額控除される
注2:寄付額の75%が交付税で補填されるため、25%が流出元負担、75%が国家負担である

上位者がすべきこと
このように、制度が作られてしまった以上は、プレーヤーは競争に参加せざるを得なくなる。だから、制度を作る権限がある人は、その競争はさせるべきなのか、させないべきなのかを事前に吟味しておかなければならない。

社内の出世競争であるとか、同業者同士の競争であるとか、場合によってはお互いが疲弊するだけで何も生まれないこともあるだろう。

逆に、切磋琢磨して状況が改善されるのであれば、上位者は競争を生み出すような仕組みを作らなければならない。



関空旅博 初参加!
2018年5月19日・20日に開かれた関空旅博に初めて行ってきましたので、レポート記事です。全部で200のブースが開設され、エアライン・各国の観光局・屋台販売と楽しみが盛りだくさんでした。



インバウンドでいっぱいの南海電車
南海電車での関空訪問でしたが、なんば駅を出発した段階で座席は観光客でほぼ埋まっていました。スーツケースを引いた乗客ばかりで、インバウンドの勢いを感じられます。関西空港駅でも、到着したばかりの外国人が列をなして切符を購入していました。
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ギリシャ料理セットを堪能
まずは昼食がてら屋台をのぞきに行ったところ、ジューシーなギリシャ料理を発見。早速、1000円でギリシャプレートセットを注文です。大将(日本人ですが。)の笑顔が素敵ですね。屋台によっては、本国からシェフが出張しているところもありました。
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さて、グリルチキン・ソーセージ・ポテトのセットですが、ソースが日本ではなかなか食べられない味で、ギリシャ感をしっかりと堪能できました。白いソースはヨーグルトが、赤はトマトがベースです。

飛行機観察とチャリティーマーケット
次に展望台に移動して飛行機撮影です。展望ホールのスカイビューまではバス連絡(無料)で、通常は15分間隔の運行ですが、旅博期間中は5分間隔に増発されていました。
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手前から2番目に泊まっているのが、タイ国際航空のA380です。大韓航空よりも奥にあるにもかかわらず大きく見えますから、A380の巨大さがよく分かります。
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そして、離陸機の撮影ですが、一番よく取れたのがこの写真。アシアナ航空ですが、期待番号を見るとHL7747とあり、A330-300のようです。

展望ホール2階ではチャリティーマーケットが開催されており、不要になった品が販売されていました。今回はエミレーツ航空の時刻表を購入しました(研究にも使えそうです)。
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他にも耳栓やイヤホン、機内食の食器など、機内サービスで使われた余りも出品されており、陸上でも使ってみたいというマニアには是非、来年参加してもらいたいところです。

くじ引きで大当たり!
メインターミナルに戻り、ブースを色々と回っていたのですが、エアアジアがくじ引きをしていました。せっかくなのでと試したところ、なんと機内グッズセットが大当たり!
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アイマスク・首まくら・ブランケットのセットです。エアアジアで旅行するときは愛用させていただく予定です。

旅行欲をかきたてるイベントだった
関空旅博は毎年開催されているのですが、なかなか足がむかず、今回ようやっと初参加できました。丸一日楽しむことができ、今度はどこに旅行しようかとワクワクした気分になりました。また来年も参加しようと思います。



日本経済は2年ぶりのマイナス成長に
5月17日に1~3月分の経済成長率が発表された。実質GDPは前期比で年率換算0.6%のマイナスとなり、2年ぶりのマイナス成長となった。

さて、今回は経済統計の王様ともいえるGDP統計の読み方について解説しよう。全体の数値は新聞の見出しになるが、その内訳まで検討されることはあまりない。統計のクセに気を付けながら、日本経済の動向を正しく把握できるようになりたい。

3行要約
・GDPは民間の支出に注目すべき
・消費と投資はおおむね横ばい
・マイナス成長の主因は住宅投資の落ち込み



見出し

GDP(Gross Domestic Product)は国内総生産のことであるが、作ったものは誰かに購入され、その購入代金は誰かの所得となるから、「生産=支出=所得」の関係が恒等式として成り立つ。これは、「GDPの三面等価」として知られている。

生産・消費・所得のどの側面から測定しても結果は同じなのであるが、統計としては国内総支出として発表されるのが普通である。これは、生産力が極めて高い現代経済においては、供給側よりも需要側が景気の先行きを決定づけるからである。

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ポイント1:民間の支出
支出の内訳として注目すべき部分は、個人消費・住宅投資・設備投資の3つである。これらは市場での支出であり、経済活動の実態を反映する部分だからである。逆に、政府消費や公共投資は国や自治体が支出した金額にすぎないので、これらがいくら多くとも、経済活動が活発だということはできない。

今回であれば、個人消費と設備投資は横ばいだが、住宅投資はマイナス幅が大きくなっている。この間まで、相続税対策のアパート建設がブームであったが、それが一段落したということだろう。銀行の積極的な融資も相まってかなりの過熱感があったから、ブームが終息したことはむしろ朗報といえる。

ポイント2:海外への輸出
つぎに注目すべきなのは輸出である。輸出に関しては相手国の経済状態に依存するので、これを日本が独自に操作することは不可能である。

ただし、「輸出→好調な企業業績→賃上げ」の流れが存在するので、景気の先行指標として有用である。今回は前期比でプラスを維持しているので、安心材料だ。

ポイント3:民間在庫
最後に見るべきは、民間在庫である。これは、生産したものの消費されなかった部分である。国内総「生産」の統計であるから、消費はされなくとも統計上はGDPに含まれる。

統計上、在庫の減少はGDPを押し下げるが、売れ残りが少なかったわけだから実際には望ましいことである。したがって、これがマイナスになっていることはむしろ経済状態が良好であることを示している。減少した在庫を埋め合わせるために、次期以降に生産が増加するだろう。

逆に、景気の過熱局面ではGDPは高成長でも在庫が積みあがってしまい、将来の生産を押し下げる要因になることも多い。

今回は変化がほぼゼロなので、在庫から特段の景気動向を読み取ることはできない。

消費に弱さがみられるが、マイナス成長の主因は住宅投資
以上のようにGDP統計を読み解いてきたが、今回のマイナス成長は住宅投資が原因といえる。個人消費と設備投資が横ばいなので景気が悪いという状況ではないが、一旦、踊り場に入った可能性がある。



ANA・JALがともに長距離LCCに参入
ANAとJALが相次いで長距離LCCへの参入を表明しました。以前よりANAはPeachとVanillaが、JALはJet StarがLCC事業を展開していましたが、ともに4時間圏内の短距離路線のみの運航でした。ここにきて、なぜ長距離の市場に参入するようになったのでしょうか?

3行要約
・LCCは短距離に向いている
・競争から逃れるため、長距離に進出
・観光都市やリゾート地が就航候補




LCCは短距離向けのビジネスだった
LCCは本来、短距離向けのビジネスです。エアアジアは短距離線からスタートし、その後、長距離専門のエアアジアXを設立していますし、ライアンエアは世界最大のLCCでありながら現在でも短距離路線にしか就航していません。

LCCが単距離向きである第一の理由は、効率的な運航のために機材を単一の小型機に統一していることです。少ない定員の小型機を使用して空席を減らすとともに、機材を統一することでパイロットや整備士の訓練コストを削減します。小型機は燃料積載量の関係上、数千キロまでしか飛ぶことができないので、おのずと路線は短距離のみになります。

低価格実現のためにシートピッチを狭くしているのも、長距離に向かない理由です。飛行時間が数時間程度であれば座席が狭くても我慢できますが、さすがに長い時間は耐えられません。座席を広くするとコストが上がってフルサービスキャリア(FSC)との差別化ができなくなりますので、路線は客が狭い座席に耐えられる距離に限定されてしまいます。

また、ノンフリルサービスもLCCの特徴ですが、長時間のフライトでは食事や飲み物が必要になってきますので、やはりノンフリルを維持できなくなります。

このように、小型の単一機材・狭い座席・ノンフリルサービスといったLCCの特徴はすべて、短距離路線で効果を発揮できるものばかりです。

短距離線は飽和状態
では、なぜここにきてLCCが長距離化しつつあるのでしょうか?その最大の理由は、短距離の市場は飽和してしまい競争が激しくなったからです。

大阪(関西)-ソウル(仁川)線を見てみましょう。訪日観光ブームの影響もありますが、一日に24便が飛んでいます。FSCのあしあアシアナ・大韓をはじめ、LCCはジンエアー・チェジュエアー・ピーチ・イージージェット・テーウェイ・エアソウルと各社入り乱れています。
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OAG調査 2018年

供給量もここ5年で2.1倍に増えており、競争環境がかなり悪化しています。短距離路線は参入しやすいこともあって、どこも厳しい競争にさらされています。ですから、他社が参入していない都市をめざして長距離に進出するわけです。

「狙い目」の長距離路線は?
長距離LCCの構想は発表しましたが、ANA・JALともに具体的な都市名には言及していません。どういった都市が候補として考えられるでしょうか?

ビジネス客を中心とする高単価客は高サービスを求めますので、引き続きANA・JAL本体の顧客となるでしょう。そうすると、やはりLCCは観光といった支払意志額が低い顧客セグメントを担当することになりそうです。

長距離で観光客に人気の場所ということで、パリ・ロサンゼルス・シドニーといった街やハワイ・バリ・プーケット・ケアンズなどのビーチリゾートが候補になりそうです。

観光地を一通り網羅した後は、需要が大きい世界の大都市に向けて就航するかもしれません。この場合、エアカナダルージュのようにサービス水準をやや高くして一部のビジネス客を取り込む可能性もあります。

いずれにしても、日本のLCC市場は新たな領域に入っていきますので、今後の展開に期待したいところです。




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