よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

2018年06月

学会ってどんなところ?
学会と聞いてどんなところを想像するでしょうか?大学教授がまじめに議論しているとか、何やら難しいことをしていそうだとか、はたまた、大学を離れて息抜きをしているとか、色々なイメージを持っている人がいると思います。

ちょうど香港で開催されたITEA(International Transportation Economics Association)の年次大会に参加してきましたので、その報告もかねて学会とはどのようなところなのかを紹介したいと思います。


メインは研究発表
まずは、百聞は一見に如かずということで学会会場の写真をご覧ください。IMG_20180628_090043
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私が研究報告をしている様子ですが、雰囲気としては教室で授業をしているのと同じです。聞いているのが専門家ということで、精神的には疲れますが。。。

発表時間が20分、討論が10分で持ち時間は計30分というのが標準的なところです。自分が進めてきた研究が他の研究者にも受け入れてもらえれば万々歳です。問題点やさらに掘り下げるべきところを指摘されれば、今後の研究に反映させることにします。

意外と大事な休憩時間
自分の持ち時間だけではなく、休憩時間にも研究について語り合います。IMG_20180625_103852
ラウンジにはコーヒーとスナックが用意されることが多いですが、これらを片手にディスカッションです。

研究の話だけではなく、近況報告や大学の事情についても情報交換します。研究費の取り方についての情報も有用です。年1回(数年に1回のことも)しか会わない仲間ですので、プライベートな話で盛り上がることもあります。

休憩時間の方がホンネの情報が手に入るので、こちらが学会参加の主目的という先生もいます。

気分転換の旅行という面も・・・
日々忙しい先生方はなかなか休みを取れませんので、日常から離れて気分転換できるのも、一つのメリットです。たいていは「後泊」をしますので、最終日は観光して帰ることが多いです。(一部の人は、学会をサボって遊びに出かけることも・・・)
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インバウンド急増中の関空
インバウンドを取り込んで大躍進中の関空ですが、最新の利用状況が発表されました。2018年5月の国際線旅客は195万人と、前年同月比で20%増加しました。2010年5月は82万人でしたから、2倍以上に増えています。このところ国内線は一進一退を続けていますが、全体としての伸びは目を見張るものがあります。
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滑走路で離陸待ちが発生
2020年の東京オリンピック、2024年のIR開業予定とまだまだ成長が続きそうな関空ですが、ここまで利用が増えてくると「混雑」がボトルネックになるかもしれません。

発着回数は2017年度に18.8万回となっており、設計上の上限である23万回が視野に入ってきました。まだまだ余裕があるようにも見えますが、時間帯によっては滑走路の混雑が激しくなっており、出発の遅れにつながっています。
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これは離陸待ちの飛行機を撮影したものですが、全部で5機(後ろの方は小さくて見えませんが。。。)が順番待ちをしています。

ピークの9:50~11:20の90分間には、国際線35便・国内線7便の計42便も出発します。離陸はおおよそ2分毎ですから、ほぼ限界という状況です。
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時間帯によって料金を変える
この混雑問題を解消する方法として、ピークロードプライシング(混雑課金)による需要の平準化が考えられます。

国際線は2時間前に空港に来ておくことが推奨されていますので、空港までのアクセスと目的地での滞在時間を考えると、10時台の出発が一番便利です。そういうわけで10時台が出発のピークになっているわけです。

便利な時間は滑走路やゲートの料金を高くすることで、出発を前後に分散させようというのがピークロードプライシングです。ピークを過ぎれば11:15~11:55は5便、12時台は15便と便数が少ないですので、閑散時に出発を散らしてあげればまだまだ増便が可能です。

空域を調整し、同時離陸を可能にする
筆者は空域の専門家ではないことをお断りしておきますが、可能であるならば空域を調整して同時離陸をできるようにすれば混雑を緩和できます。関空はオープンパラレルで2本の滑走路がありますので、設備としては同時離陸が可能です。

関西には関空・伊丹・神戸と3つの空港がありますので、空域が被らないようにしています。このため、関空は滑走路が2本ありながら、空域は「単線」になっています。このため、滑走路を離陸用と着陸用に分けて利用しているのが現状です。



複数均衡とは?
ゲーム理論の第3回です。この記事では、複数均衡が起きる場合について考えます。

複数均衡とは、起きうる現実がたくさんある状況のことです。たとえば、1個しかお菓子がないとき、取り合いで友達とケンカする可能性もあるし、仲良く半分こすることもあるかもしれません。これをゲーム理論では(ケンカ、ケンカ)、(協調・協調)を戦略の組み合わせとする複数均衡と表現しています。

ゲーム理論の仕組みをご存じない方は、第1回(支配戦略均衡)・第2回(最適反応と支配戦略)を先にお読みください。

3行要約
・どの均衡も安定している
・どの均衡が実現するかは、初期状態や選択の順番による
・外部の第三者が介入することで、良い均衡を実現すべき



良い均衡と悪い均衡
まず、今回の利得票を確認しましょう。
game1
・2人でケンカをすると、楽しくないのでお互い利得はゼロ
・片方がケンカを吹っ掛けてもう一人が許したとき(協調)は、吹っ掛けた側は1、許した側は-2の利得
・お互い協調のときは、仲良く楽しいのでお互い利得は2
となっています。

結果から言うと、このゲームは(ケンカ、ケンカ)と(協調、協調)の組み合わせが均衡になっています。

まず、(ケンカ、ケンカ)から見ていきましょう。
game3
このとき、お互い利得はゼロですが、自分から許すと自分の利得は-1に減ってしまいます。なので、2人とも自分から謝ることはできず、ケンカしたままになります。これが1つ目の均衡です。

次に、(協調、協調)を見ましょう。
game4
このとき、お互い2の利得を得ていますが、あえてケンカを吹っ掛けると自分の利得は1に減ってしまいます。なので、仲良くし続けることになります。これが2つ目の均衡です。

均衡ではないとき
では、一方だけがケンカを吹っ掛けている状況はどうでしょうか?仮に、ケンカを売っているのがプレーヤー1だとすれば、右上の状況です。
game2
ここでは、プレーヤー1にとっては、さっさと謝ってしまえば利得を1から2に増やすことができます。しかし、プレーヤー2にとっては逆に、協調をやめてケンカにすれば利得を-2から0にすることができます。

なので、(ケンカ、協調)という状況は安定(持続可能)ではありません。どちらかが行動を変えることによって、(ケンカ、ケンカ)か(協調、協調)の状態に移行します。

どの均衡になるかは、順番に依存する
ただし、複数均衡のどちらが実現するかは、事前には分かりません。そのときどきの、物事が起きる順序によって、結果が決まります。

ケンカしあっていたらそのままケンカを続けるし、仲が良ければずっと仲が良い。ケンカと協調の関係からスタートすれば、ケンカを吹っ掛けた側が早く謝れば仲良くなれるし、ケンカを売られた側がキレ返せば2人でケンカが始まります。

このように、複数の状態が実現しうるけれども、初期状態やプレーヤーの判断の順序によって結果が変わってきます。このような状態を経済学では、「経路依存」といいます。

まとめ
親や教師といった第三者が「協調」に誘導すれば2人ともが高い効用を得られるように、複数均衡が存在するケースでは、外部がうまく環境に介入してやることで全体としてよりよい状況を実現することができそうです。



デルタがシアトル線就航を発表
関空はアジア方面の路線が好調で、発着回数・旅客数ともに過去最高を更新中です。一見絶好調に見える関空ですが、北米路線はわずかにサンフランシスコ・ロサンゼルス・バンクーバーのみとなっています。

そんな中、デルタ航空がシアトル線を2019年春から運行することを発表しました(公式発表はこちら)。今回は、この新たな路線の概要と、さらなる可能性を探っていきます。20170320_DL_A2ASeattleBoeing767-300ER_LearStillsPod-0136-v3 (1)



シアトル乗り継ぎを視野に

“As Seattle’s global airline, Delta offers service to the top destinations throughout Asia, and additional access to Japan is important for our Seattle customers as well as the business community throughout Washington state and beyond,” (上記の公式発表より)

シアトルをハブとするデルタ航空はアジア中に路線を展開しているが、日本への新たな路線は、シアトルのみならず、ワシントン州やさらにその先の旅客にとっても重要なものである。

「その先(Beyond)」に注意して読むと、関西→全米や全米→関西を移動する旅客に向けた路線であることが分かります。スケジュールについてはまだ発表されていませんが、シアトルでの乗り継ぎが便利になるものと予想されます。

機材はB767-300ER
運行機材はB767-300ERで、ビジネスクラス25席、プレミアムエコノミー29席、エコノミー171席の計225席です。機材がB787にならなかったのは残念ですが、シアトルは西海岸なので航続距離があまり必要ないからでしょうか。

座席サービスとしては、Wi-Fi・個人モニター・USB充電が全席で利用可能です。Wi-Fiはおそらく有料と考えられますが、フライト中に映画を楽しんだり、スマホに充電できるというのはありがたいサービスです。

デルタ-大韓航空のJV(ジョイントベンチャー)の一環として運行

"The Seattle-Osaka route will be included in Delta’s joint venture partnership with Korean Air, which serves 12 destinations in Japan." (上記の公式発表より)

シアトル-大阪線は大韓航空とのJV(日本の12都市へサービスを提供中)の一環となる予定です。


とあるように、大韓航空とのJVの一環として運行されるようです。これの解釈は難しいものがありますが、ソウル経由を含めれば、大阪-シアトルの移動が一日複数便として利用できるようにするのかもしれません。

上位クラスを埋められるのか?
この路線の継続や、他の路線の新設にとって重要なのは、ビジネスやプレミアムエコノミーといった上位クラスを埋められるかどうかです。関空は観光利用が多いため旅客がエコノミークラスに偏っており、これが日系キャリアが関空に力を入れていない理由です。

京都や今後建設予定のIRを訪れる富裕層を取り込むことが、路線の維持・発展には不可欠となりそうです。



大学への私学助成は年3000億円
学校法人といえども私立学校は民間事業者にすぎないが、大学だけでも年間2943億円もの補助金を受け取っている。民間への補助は多種多様であるが、私学助成の規模は群を抜いて大きく、これに対する批判も見受けられる。

今回は、私学助成に対する理論的な根拠を考えてみたい。

3行要約
・公私で教育内容に大差はない
・私学の存在により、国の教育負担は軽減される
・この軽減分の一部を、私学に支給している



国公立・私立が同様の教育を提供
大学には国公立と私立があることから分かるように、公共部門と私的部門の双方が大学教育を提供している。そして、これらの大学には1学年当たり60万人ほどの学生が通っている。

学生の多くは卒業後、企業に就職し、社会を支える一員として活躍する。また、入学偏差値が同程度であるならば、企業は国公立か私立かを問わず学生を採用する。

つまるところ、運営主体の公私に関係なく大学はほぼ同様の教育を提供し、その教育効果も大差はない。入学時の学力が同程度であれば、学生にとっては国公立と私立のどちらで学んでも、卒業時に到達する能力に大差はないともいえる。

国の負担が軽減されるので、私立に補助を支給

資源がない日本は人材で成り立っている国なので、経済力を維持するためには教育が不可欠だ。国を背負う人材を育成するために、仮に、一定人数の大卒者が必要だとしよう。

教育の受益者は国と国民なので、その費用を税で賄うことに合理性がある。ただ、私学が教育の一部を引き受けてくれるならば、その分だけ国の負担は軽減される。この軽減された分を私立大学に給付しようというのが、私学助成である。

つまり、国が税金ですべきことを分担した見返りとして、私学に補助金が支給されているわけである。「分担した」という部分がポイントで、私学といえども自由勝手に教育することはできず、法と文科省の指導に従わなければならないのである。

逆に言うと、朝鮮人学校は「分担」ということができないので、私学助成を受けることができないのである。



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