よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

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2018年07月

2024年、待望の新滑走路オープン

前回から引き続き、インバウンドで活況を呈する福岡空港の動向を探っていきます。今回は、2024年度に開業予定の新滑走路でどのように発展していくのか予想します。




新滑走路はやや距離が短いのがネック
福岡空港では2024年度の完成に向けて、新滑走路の建設工事が進められています。現在の滑走路の隣に、作られています。
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新滑走路は長さ2,500メートルですので、中型機までなら問題なく発着できます。大型機(B777など)は国内線であれば大丈夫かと思いますが、燃料を積み込む長距離線には使えなさそうです。

今のところ、福岡空港からの長距離便は中型機(A330)によるヘルシンキ線のみなので問題はありませんが、九州の基幹空港として発展していくならば、将来的にはネックになるかもしれません。

新滑走路の活用には、飛行経路の見直しが不可欠
前回の記事で、福岡空港は容量オーバーであると書きましたが、新滑走路の開業後もこの状況はあまり緩和されそうにありません。安定的に発着できる回数は、現在の年16.5万回から18.8万回へと14%増えるのみです。

これは、滑走路同士が近い「クロースパラレル」なので同時利用ができないこと、そして、空港周辺の空域が狭いことが原因です。

これでは滑走路への投資効果が小さすぎるということで出てきたのが、上の案です。北風時に空港の手前で急旋回するのではなく、大きく回り込む経路です。
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福岡空港は市街地のど真ん中にあり、騒音が問題になっています。なので、これまでは極力陸上を飛ばないようにしていたのですが、新案では福岡県・佐賀県の上空をかなり飛ぶことになりそうです。

ただ、この飛行経路を採用すれば、発着回数は23.5万回にまで増やすことができます。成田空港が25万回・関西空港が18万回といったところなので、需要さえついてくれば、東京や大阪の主要空港に並び立つことができます。

就航都市はアジアが中心になると思いますが、オランダのアムステルダムへの就航実績もありますので、ヨーロッパへの長距離便も期待できます。アメリカ方面へは東京乗継でも距離的なロスはありませんので、就航の可能性は低いとみられます。(これは、関空やセントレアも同じで、ヨーロッパに比べてアメリカ路線は少ない)

とはいえ、アジアの成長を取り込みつつ路線を拡大していけば、新たな「西の拠点」としての存在感を発揮することができそうです。



「影」の地方都市
都市の力は地価に反映されます。路線価から都市の現状を読み解くシリーズも最終回です。ここまで、北海道のリゾート・インバウンドであふれる関西・一極集中の東京と光の面を見てきました。

今回は最後に、影の面として衰退が止まらない地方都市に着目します。地方とはいっても広域の中心となる札幌・仙台・広島・福岡はミニ東京として人口が増えていますし、県庁所在地レベルでも衰退はゆっくりとしています。

本当にひどいのは人口が5万人もいない中小都市です。「市」ではあるけれども、鉄道も通らないような場所を取り上げます。

なお、路線価の対象となるのは一定以上の規模を有する都市のみですので、今回紹介する都市ですら、まだマシな状況であるということを書き加えておきます。


高知県四万十市 地方都市の中ではまだ恵まれているか?
四万十市は高知県の南東部にある人口35,000人の「市」です。かつては中村氏の城下町として栄え、区割りが碁盤になっていることから、小京都とも呼ばれています。しかし、人口の減少が止まらず、ピークからは15%ほど減っています。
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nakamura
中心部である市役所前の路線価の推移は、以下の通りです。
2013年 4.9万円
2014年 4.8万円
2015年 4.7万円
2016年 4.6万円
2017年 4.6万円
2018年 4.5万円(1平方メートルあたり)

前年比で2.2%マイナス、5年前比で8.2%マイナスとなっています。人口減少ということで、やはり地価は下落していますが、予想よりは下がっていませんでした。この後見る輪島市と比べると、まだ恵まれているという感想になります。

石川県輪島市 輪島塗があるも、衰退は止まらず
続いて石川県輪島市です。伝統工芸である輪島塗で有名ですが、金沢地裁の支部も置かれており、能登半島の中心でもある都市です。
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中心とはいえ人口は27,000人しかいません。人口減少も著しく、直近5年間では10%も減っています。街中もスカスカになっており、ザ・地方都市ともいえる様相を呈しています。
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さて、輪島市の中心部である国道249号線沿いの地価ですが、
2013年 5.7万円
2014年 5.2万円
2015年 4.9万円
2016年 4.8万円
2017年 4.6万円
2018年 4.4万円(1平方メートルあたり)

と勢いよく下落しています。前年比で4.4%、5年前比で22.8%もの値下がりです。ここまで下がってしまうと、もはや資産ということもできなさそうです。

輪島市は鉄道も通っておらず、インバウンドの取り込みも難しそうです。せっかくの輪島塗を活かせないのがもったいないところです。金沢からバスで2時間強ですので、うまく誘客できれば賑わいを取り戻せるかもしれません。



民営化を迎えた福岡空港
本州の西端にあるという地の利を生かして、成長著しいアジアからの恩恵を受けている福岡ですが、そのゲートウェイである福岡空港の現状と将来像について、3回に分けて考察していきます。

まず第1回は、福岡空港の概要と、近年の成長の軌跡について説明します。第2回は2024年度に開業予定の新滑走路の効果を見ます。そして、第3回は民営化後に経営を担う「福岡エアポートホールディングス」の事業計画を概観しながら、将来を見通していきます。




便利だが小規模な都市型空港
陸軍の空港として1944年に建設されたのが、福岡空港のはじまりです。敗戦によってアメリカに接収されましたが、1972年に返還され、現在に至ります。

滑走路は2,800メートルが1本のみで、複数本体制になっている他の主要空港と比較すると、小規模な空港といえます。博多駅から地下鉄で2駅5分と都心部から至近で、非常に利便性が高いのが特徴です。
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とはいえ、この利便性と引き換えに、福岡市には厳しい航空規制が課せられ、博多駅周辺ではビルの高さは54.1メートルに制限されています。また、用地の不足から空港の拡張も困難で、近年の需要増を取りこぼす原因にもなっています。

旅客は伸びるも、発着回数は上限に達する
発着回数は2013年に17万回に到達してから、足踏みを続けています。1本の滑走路では年間16.5万回程度が上限であり、新たな就航希望を断らざるを得ない状況です。
発着数
2018年7月にも、スターフライヤーが就航を予定していた台北線を無期限延期したというニュースがありました。

発着回数は上限に達したものの、旅客数は今のところ伸び続けています。機材の大型化と搭乗率の向上により、当面は成長を続けられそうです。
旅客数(福岡)
とはいえ、近年はB737やA320といった小型機が主流になっているので、1便あたりの旅客数が150人まで増えても、旅客数は2600万人程度が限界となりそうです。

2025年に第2滑走路が完成予定
成長の限界に対応するため、第2滑走路の建設が決定されました。2000億円にものぼる建設費を賄うため、運営権を売却することになり、2019年からは、西日本鉄道や九州電力などが設立した「福岡エアポートホールディングス」が経営を担うこととなりました。

次回は、先日「福岡エアポートホールディングス」をもとにして、福岡空港の将来像について検討していきます。




日本一は銀座 1平方メートルで4432万円!
7月2日に公表された2018年度の路線価の動向を読み解く記事の第3弾です。今回は日本で最も地価が高いところに注目します。

その場所は東京銀座の鳩居堂前で、地価は1平方メートルあたりなんと4432万円もします。たった1メートル四方の土地が、一戸建てほどの価格とは驚きです。



銀座一帯が超高地価エリア
まずは、日本一土地が高い場所の写真を見ておきましょう。
ginza
ちょうどこの下に銀座駅が埋まっています。

路線価図を見ると、写真の手前から奥にかけての土地が44320Aとなっています。単位が1000円なので、この道路沿いの土地は4432万円/㎡ということを示しています。
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また、周辺の土地も軒並み1000万円を超えています。一体どのような使い方をすれば元を取れるのかと不思議でなりません。

地価は5年で2倍超に
鳩居堂前の地価の推移を5年分追ってみましょう。

2013年 2152万円
2014年 2360万円
2015年 2696万円
2016年 3200万円
2017年 4032万円
2018年 4432万円(1平方メートルあたり)

前年比で9.9%、5年前比で105.9%の上昇です。元が高かったにもかかわらず、さらに倍になったというのがすごいところです。

日銀の超金融緩和もあって、10年物国債の金利はゼロになってしまいました。投資先がなくなった銀行が融資を進めているわけですが、その資金が東京の土地にもかなり流入しているのは間違いありません。

来年以降、さらに上昇を続けていくのか、あるいはミニバブルも終焉を迎えるのか、今後の動向が気になるところです。



現金収支は914億円 純利益は283億円


2018年6月7日に、関西エアポートが2017年度の決算を発表しました。売上高は2064億円(前期比+15%)、営業利益は529億円(同+40%)、純利益は283億円(同+67%)でした。現金収支は償却前キャッシュフローで914億円(同19%)です。
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決算資料は全て、関西エアポートの決算説明資料より



旅客増で利益も増
増収増益の要因は、まずなによりも、発着回数と旅客数の増加です。関空の旅客数は2ケタの増加ですし、発着枠の規制がある伊丹でも4%増えています。
rieki
空港の売り上げは航空系(着陸料や施設利用料)が約半分なので、旅客の増加は直接的に経営に貢献します。非航空系(物販や飲食)も大切ですが、空港の利用者が主なお客さんなので、やはり、旅客を増えると利益を押し上げます。

伸び続けるアジア、グアムはマイナス
さて、その増えている旅客はどこから来ているのでしょうか?houmen
方面別で見ると、伸びているのは韓国(前年比+27%)、香港・マカオ(同+23%)です。オセアニアや北米といった関西エアポートが重視している遠距離も伸びています。逆に減っているのはグアム・サイパン(同-25%)で、北朝鮮のミサイル問題が影響しています。

日本人の出国については、「インバウンドの陰に隠れる、日本人の出国動向は?」で説明していますので、ご覧ください。

エアライン・路線ともに順調に拡大
新規の路線と航空会社も増えています。まず国内では、Peachが新潟へ飛ばしはじめ、8月からは釧路便もスタートします。Vanillaも奄美大島と函館に新路線を開設しました。

国際線はJetstar Asiaがダナンとクラークへ就航しました。マニラが混雑のため、近隣のクラークが選ばれたようです。ダナンはベトナム中部のリゾート地で、日本人を主要顧客としているようです。shinki
貨物便もアゼルバイジャンのバクーへ新路線が始まります。旅客便では考えられない路線ですが、貨物ならではといったところです。エアラインはシルクウェイ航空で関空にとってはニューフェイスです。

新しいエアラインが続々と入ってきていますので、航空写真家にとってもますます撮影が楽しくなりそうです。



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