よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

2018年09月

前日比マイナス0.3%で買い入れ確率大
日銀のETF買い入れは、TOPIXが前日よりも一定以上下がったときに実施されるといわれていますが、権利落ちで株価が下落した場合でも買い入れはあるのでしょうか?

日銀は量的金融緩和の一環として、ETFを通じて年間6兆円程度の株式を買い入れています。この買い入れは、株価が前日よりも下がったときに行われる確率が高いのですが、前もって決められたラインがあるわけではありません。

日経予測ドットコム」さんが過去の事例から求めた買い入れ確率は下のようになっています。
nichigin_TEF
前場の株価が前日比で0.3%以上下げると買い入れ確率は3/4ほど、0.45%以上下げるとほぼ確実になっています。




実質下げなくても、ETF買い入れ
2018年9月26日は、3月期決算企業の中間配当の権利落ち日でした。この日の前場の下げ幅は0.70%でしたが、このうち0.67%は権利落ち分です。なので、実質的な下げは0.03%です。

もし、日銀が権利落ち分を考慮しているのであれば、買い入れは行われないレベルですが、実際には703億円の買い入れがおこなわれました。

このことから、日銀は権利落ちを除いた実質的な下げではなく、実際の下げに連動して買い入れをしている可能性が高いことが分かりました。日銀トレードをしている方も多いかと思いますが、ETF買い入れパターンを把握して相場で勝っていきましょう。

エアプサンに乗ってみた
エアプサンは韓国・プサンを拠点とするLCCで、日本には札幌・東京・名古屋・大阪・福岡に就航しています。また、名古屋以外からは大邱線も運航しています。

今回、福岡-プサン線に搭乗しましたので、機内の様子をレポートします。

LCCとしては広いシートピッチ

搭乗した便はA321を使用しており、LCCでよく使われているA320よりも胴長でした。エアプサンではA320とA321を併用しているようですが、シートピッチはともに32.1インチです。

PeachやJetstarなど、A320に30列詰め込んでいるLCCはシートピッチが29インチなので、これらと比べると快適性はかなり高いです。
IMG_20180910_190208
また、足元を広く使えるように工夫もされています。写真をご覧いただければ分かりますが、シートポケットが座席の上部に設けられています。普通は膝のあたりにありますので、これが上に移動してある分だけ、広く座ることができます。

ただ、一つ問題として、飲み物を置いておく場所がありません。手で持っておかなければならなかったので、この点は不便でした。

運賃はやや高いが、快適性に見合うか
運賃についてですが、Peachの最安値よりは高い水準です。エアプサンはall inの運賃設定にしていないので、運賃に加えて空港利用料と燃油サーチャージを負担する必要があります。

運賃だけならば片道5,000円ほどですが、これに諸費用が加算されるので、安いときでも1万円弱といったところです。
airpusan
大阪-プサンの一例ですが、運賃部分はちょうど1万円でも、諸費用7,940円が別途必要です。座席が広い分だけやや高めの価格ですが、快適性は普通のLCCよりも優れているので、予算に少々余裕がある方にお勧めのエアラインと言えそうです。



雇用者報酬は過去最高へ
前回の記事(所得は本格的に増え始めたのか?雇用者報酬は前期比1.8%アップ)で、給料が上がってきたと書きましたが、今回は長期的な動向について調査してみました。

データは内閣府が発表している国民経済計算を使っています(なお、名目・季節調整済みの値を使用)。ウェブ上で公開されているのは1994年からなので、そこから現在までの24年間の変化を見ていきます。

まず、雇用者報酬の動向ですが、1997年に280兆円のピークを付けた後、2003年には250兆円にまで低下しています。その後、景気回復に伴って増加しましたが、リーマンショックの直後にはまた250兆円にまで逆戻りしました。

そして、アベノミクス期には雇用者報酬も増加を続け、現在は285兆円と1997年のピークを越えてきました。ボトムからは14%ほど増えましたので、体感的にも景気の良さを実感できるかもしれません。

雇用者報酬




経済成長と労働者への還元で給料アップ
雇用者報酬が大きく伸びた要因は2つあります。ひとつは経済規模である国内総生産(=Gross Domestic Product: GDP)の成長、もうひとつは労働者の取り分を表す労働分配率の改善です。
国内総生産
まずGDPからですが、2011年の492兆円を底として、直近では551兆円に成長しました。この間の伸びは12.0%ですので、雇用者報酬の伸びのうち12.0%は経済全体の成長によるものだと考えることができます。

雇用者報酬は14%伸びていますので、残りの2%は何が原因なのでしょうか?
労働分配率
それは、労働分配率の上昇によって説明できます。GDPとは国内で生み出された価値の総額を表すものですが、そのうちどれだけが労働者に回ったかを表すのが労働分配率です。

この値は50%近辺をうろうろしているのですが、最近、50%の水準を上回ってきました。水色で塗られているところは景気後退期で、そうでないところは景気回復期です。

景気が回復し始めてすぐは、経済活動が活発化する一方で給料は増えないので、労働分配率は低下します。しばらく景気回復が続くと、給料が遅れて上がってくるので、労働分配率も改善してきます。このように見ると、今回の景気回復において、ようやく給料が上がってくる段階になったようです。

さらに景気回復が続けば、GDPの増加と労働分配率の上昇がダブルで賃金を押し上げることになるかと思います。国民が広く景気回復を実感できる日も目の前と言えそうです。



台風で関空が閉鎖・・・
台風21号による被害のため、関空は9月4日から閉鎖されました。もちろん、欠航が予想される状況では新たな予約は入りにくくなるわけですが、その影響で運賃がどのように変化したかを報告します。

対象の便が運休になってしまっては元も子もないですが、予想よりも早い復旧により、何とか欠航は回避できそうで良かったです。




やはり、運賃は大幅安に
まず、対象としている便の確認ですが、10月1日出発で
・PeachのMM103便(関西-新千歳)
・ScootのTR700便(関西-ホノルル)
の2路線を調査しています。
LCC
まずMM103便からですが、台風以前は予約の入りが好調だったらしく、高いところでは11,590円にまで値上がりしていました。もはや、LCCとは言えないレベルの価格です。

それが、被災後は一気に6,590円にまで下がりました。やはり、新たな予約が入らなかったのでしょう。

TR700便も同様に、被災前は23,675円まで上がっていた運賃が、12,887円に下落しました。これはセール運賃なのですが、空席を恐れたScootが少しでも席を売るためにプロモーションを掛けたものと考えられます。

台風により調査が中断になってしまうことが心配になりましたが、結果的には「災害時の価格データ」を手に入れることができました。あと2週間、出発直前の運賃動向を引き続き追跡していきます。



国民の給料は増加局面に入った?
9月10日に国民経済計算(GDP)の2018年第二四半期の二次速報が発表されました。通常は支出面に注目が集まりますが、所得面として雇用者報酬も公表されています。所得に関する統計は賃金構造基本統計調査などいろいろありますが、GDPはマクロ面からの調査で、最も包括的に実態を把握することができます。

最新の統計では、雇用者報酬が前期比1.8%増という結果になりました。賃金は増加局面に入ったのかどうか、統計資料を元に確認していきましょう。




賃金は経済成長率よりも増えている
まず、雇用者報酬という用語の意味を確認しておきます。雇用者報酬とは、労働者が得た賃金の総額のことを言います。総額ですので、雇用者報酬=平均賃金×労働者数になることに注意です。平均賃金が増えても、働く人が増えても、雇用者報酬は増加します。

経済成長率と雇用者報酬の変化を見てみましょう。ともに、実質値で季節調整済みの前期比の伸びを表しています。
gdp4
gdp3

2017年中は雇用者報酬と経済成長率の変化はほぼ同じです。つまり、経済が成長したのと同じペースで賃金も増えていました。

それが、2018年になると、雇用者報酬の伸びが急に高くなっています。上半期では経済は0.5%しか成長していないのに、賃金は3.0%も増えました。

賃金が消費に回ることが大切

このことは、経済の伸びよりも、高い賃金を出さなくてはいけなくなったことを意味します。企業の取り分よりも労働者の取り分の方が大きく伸びているので、労働分配率も改善しています。

この原因は、言うまでもなく人手不足でしょう。有効求人倍率は1.62倍に達し、44年ぶりの高さです。企業は、人を雇うためには高い賃金を提示する必要に迫られています。

今後も人手不足を背景として賃金は上昇していくものと考えられますが、その増えた賃金が消費に回るかどうかが重要です。直近の3ヶ月では、消費の成長は0.7%しかありません。1.8%の賃金増に対して消費が0.7%増なので、残りは貯蓄に回っています

安定して経済成長が続くためには、消費の盛り上がりが欠かせません。増えた賃金が消費に回せるようなマインドの改善が求められるでしょう。

↑このページのトップヘ