よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

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2018年10月

無事に過去最大の便数へ
先週の記事(関空9月の旅客数は48%減 伊丹は代替利用で3%増)では台風21号の影響で旅客数が激減したと書きましたが、関空の立ち直りは意外と早そうです。というのも、2018年の冬ダイヤでは増便が相次ぎ、便数が過去最高の週1451便に達するためです。

一時はインバウンドが激減しミナミは閑散としてしまいましたが、今では賑わいを取り戻しています。

関西の得意客であるアジア各国にも台風は襲来することから、アジア人にとっては台風被害というのは案外身近なものなのかもしれません。台風は過ぎ去れば問題ないという認識を持ってくれているのか、観光客の戻りは早かったようです。

2018年冬ダイヤでの大きな変更点を中心に、国際線の増減便の動向を紹介します。なお、記事中の図表は関西エアポートのプレスリリース資料から引用しています。
2018冬


中国が再成長 東南アジア・北米も拡大
まずは旅客便の動向からですが、前期比で週95便(7.6%)増加して週1309便になります。直近のボトムである2010年からは2.27倍への増加です。
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方面別の提供座席数をみると、中国・東南アジア・北米が伸びています。中国はこのところ頭打ち感がありましたが、再成長のステージに入ったようです。東南アジアは経済成長を背景に、順調に拡大しています。

そして、懸案だった北米路線も45%増と大きな伸びを示しています。絶対水準は週13,000席と大きくありませんが、長距離便の増加は関空にとって悲願でもあります。2019年夏ダイヤではデルタ航空によるシアトル線の再開が予定されていますので、今後も期待できそうです。

逆に、韓国・香港・マカオ・台湾は横ばいから減少にとどまりました。人口の割には関西への訪問数が高くなっていますので、ここからの伸びはやはり厳しいのではないかと思われます。

貨物はFeDexがさらに増便
続いて貨物便は前期比3便増加の週142便になります。台風では貨物エリアの復旧が遅れており、減便を恐れる状況でしたが、なんとかプラスへの着地となりました。

関空を東アジアのハブと位置付けているFedExが週6便増やして58便になります。ネットワークの拡大を安定的に継続してくれており、今後の拡大に期待したいところです。


1万円の価値は1万円か?
前回の記事では、どんなものが資産や負債なのかを紹介しました。今回は、資産や負債の金額をどのように測定すればいいのかを考えましょう。

現金であれば、価値を測定するのは簡単です。1万円札の価値は、1万円でいいでしょう。そのままです。では、貸付金の価値はいくらでしょうか?来月1万円返してもらえるとき、その価値を1万円としてもいいでしょうか?手元にある1万円札よりは価値が低そうですね。

資産の価値を測定するにはいろいろな方法がありますが、「割引現在価値」という方法を使って資産を評価してみましょう。



割引現在価値とは?
将来のお金を、現在の価値に置きかえようというのが、割引現在価値です。今1万円持っていれば利子を得られるわけですから、1年後には1万円から増えているはずです。だから、1年後に得られる1万円よりも、今の1万円の方が価値が高いといえます。

ここで問題なのは、1年後の1万円は、今の何円に相当するかです。

ここからは、分かりやすくするために金利が10%だとしましょう。お金を預ければ1年後に1.1倍に増えるという状況です。もし、今9091円(10000円を1.1で割った値)を預ければ、1年後に1万円になっています。

ということは、1年後の1万円は、今の9091円に相当するといえます。このようにして、将来の金額を現在に置き換えるたものを割引現在価値といいます。(ちなみに、金利の10%を割引率といいます。)

毎年の収入を現在価値で評価して、合計する
では、建物や工場の価値はどのように評価すればいいでしょうか?固定資産の評価にはいろいろありますが、今回は割引現在価値を使って評価してみましょう。

資産というのは、「将来現金を生み出すか、現金の支出を減らすもの」でしたね(詳細はその1を参照)。なので、どれだけ現金を作り出す力があるかで資産を評価します。

例えば、賃貸に出すことで毎年100万円を生み出す建物があるとしましょう。この場合、来年の1万円は約91万円(100万円÷1.1)になるのは上で説明したとおりです。再来年の100万円も同様にして、約83万円(100万円÷1.1÷1.1)と求めることができます。さらに、3年後の100万円は75万円になります。

このようにして毎年の現金収入を求めて、それを全部足し合わせればいいのです。仮に30年間貸し出せるのだとすれば、その建物の価値は943万円と算定することができます。

貸し出して家賃を得る場合を考えましたが、自分で利用するときも結果は同じになります。というのも、建物を所有していれば他人から借りる必要がなくなりますので、現金の支出を減らすことができます。この支出の減少分を同じように、現在価値にして合計すればいいのです。



台風の傷跡は深かった
10月23日、関西エアポートが9月の利用状況を発表しました。前年同期比で関空はマイナス48%、伊丹はプラス3%、神戸はマイナス5%でした。

関空は台風21号の影響で閉鎖を余儀なくされた影響が大きく、旅客が半分にまで減ってしまいました。伊丹は台風当日こそ運休になりましたが、それ以降は関空の代替として利用されたこともあって、旅客数はプラスになりました。

関空の利用状況を、詳しく見ていきましょう。
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不安ならば旅行は取りやめもやむなし
内際合わせた発着回数は43%の減少でした。旅客数の減少幅の方が大きかったことから、航空会社は頑張って飛ばしたけれども、旅客はキャンセルが多かったと言えます。

空港が復旧すればエアラインは責任をもって飛ばすけれども、乗客としては大阪の状況が分からない中、無理に旅行に出なくてもいいということでしょう。

旅行キャンペーンも行われましたし、関西が大きな被害もなく平常通りであることを知ってもらえれば、旅行者も戻ってくるのではないかと思います。

国際線の方が影響が大きい
内際を分けてみると、国際線が49%減である一方、国内線は45%減とやや減り方が緩やかでした。国内線は伊丹・神戸からも飛んでいるので、3空港合わせた数字で見ると11%減にとどまりました。

国際線は他の空港で代替できなかったのに対して、国内線は振替が比較的スムーズに進んだようです。この点からは、国際線のバックアップ体制を整えておくことが今後の課題と言えそうです。

やはり、関空がダメになったら関西から国際線がゼロになるというのではリスクが大きすぎます。三空港の役割分担見直しが進められる見通しですが、神戸・伊丹にも国際線を飛ばすための設備を用意しておくことが求められます。

10月には旅客が戻っているか?
10月に入ってからは、ミナミや京都の観光地に旅行者が戻ってきているようです。9月の減少が一過性で終わるのか、それとも尾を引くのか、10月の利用状況に注目が必要です。


資産とは?負債とは?
資産って何でしょうか?負債ってなんでしょうか?なんとなくは分かっているけれども、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

資産というと、何か価値があってできるだけ多く持っていたいもの。負債は借金か何かで、減らしておきたいもの。そういったイメージでしょうか。今回は、企業の財務状況を表す貸借対照表を見ながら、資産と負債について考えていきます。



資産とは、現金と現金になりそうなもの
まず、日本を代表する企業であるトヨタ自動車の資産(2018年3月末時点)を見てみましょう。トヨタ自動車が保有している資産が一覧になっています。
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上の方から見ていくと、現金・定期預金・有価証券と並んでいます。この辺りは分かりやすく資産ですね。

その次は「受取手形及び売掛金」です。これは、お客さんからまだ受け取っていない代金のことです。代金を回収すれば現金が手に入るので、資産として扱ってもいいでしょう。

少し下に行って、「棚卸資産」。つまり、商品の在庫のことです。作ったけれども、まだ売っていない車などの金額が書かれています。

さらに下に行って「有形固定資産」を見ると、土地・建物といった項目が入っています。これらも資産と言われて違和感はないところでしょう。

このように、何らかの価値がありそうなものが資産として扱われています。より正確には、現金もしくは将来現金になりそなものが資産ということです。

そして、すぐに現金にできるものを「流動資産」、現金化するのに時間がかかるものを「固定資産」として大きく2つに分類することができます。

負債とは、将来現金を支払わなければならない義務
続いて負債についてです。
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負債の方は、行も少なくシンプルです。基本的には、借入債務(借金)と未払金だけです。

未払金とは、すでにモノは受け取ったけれども、まだ支払っていない代金のことです。企業間取引では後払いにすることも多いので、仕入れたけれども、代金は払っていないということがよく生じます。

ちなみに、負債の性質は、将来現金を支払わなければならない義務と言えそうです。借金にしても、未払い金にしても、いずれはお金を払う必要があります。

また、支払いの時期が近ければ(一年以内)短期負債、遠ければ固定負債として分類しています。

資産と負債の「価値」はいくら?
今回は、資産・負債とはどのようなものであるかについて勉強しました。次回は、資産・負債の「評価」について考えます。

現金であれば評価額はそのままです。100万円は100万円ですから。しかし、貸付金であれば踏み倒されて帰ってこないリスクもありますので、100万円の貸付でも価値はそれよりも低そうです。また、土地や建物といった実物資産であれば、何らかの形で価値を測定する必要があります。

次回、これらの方法について検討してみましょう。


関空被災に伴う特例措置が終了
台風21号の被害に伴って、伊丹空港と神戸空港が関空の機能を代替してきました。伊丹は1日370便、神戸は30便までという便数の規制を緩和するとともに、必要に応じて国際線の就航を認めることになっていましたが、特別措置が10月11日で終了しました。

JALが伊丹から香港行きの臨時便を予定していましたが、結局実現することはなくなってしまいました。24年ぶりの国際線になるはずでしたが、見ることができなくなり残念な結果です。
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将来の伊丹再国際化に期待
当初予定されていたのは、
・10月17日 伊丹-香港
・10月21日 香港-伊丹
の2便です。

JALが伊丹から臨時便を出すと発表したとき、関空はすでにほとんどの機能を復旧させていました。なので、あえて伊丹から飛ばす意味はもともとなかったと言えます。

しかも、伊丹から往復ということで日本人向けのダイヤ設定です。香港人に向けた関西復興キャンペーンとしての色合いもありませんでした。

うがった見方をすれば、伊丹から国際線を飛ばした実績が欲しかったJALと国交省が臨時便を決定したと考えることもできます。

とはいえ、24年ぶりの国際線に期待した航空ファンも多かったと思います。関空が完全復旧した以上は特例措置の終了もやむをえませんが、残念な結果となってしまいました。

今後、三空港懇で本格的に規制について議論され、正式に伊丹に国際線が戻ってくる日が来ることを待つことにしましょう。


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