よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

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2018年11月

関空は需要面でも復旧を果たした
11月26日、関西エアポートは2018年10月の利用状況を発表しました。9月は台風による閉鎖の影響で旅客数が半減してしまいましたが、わずか1ヶ月で前年比プラスに復帰しました。
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日本人は大幅な増加。外国人の穴を埋める形に
国際線の旅客数は全体でプラス5%でした。外国人はプラス1%とほぼ横ばいでしたが、日本人は18%ものプラスになりました。

外国人にとっては復旧の情報を手に入れるのは難しいので、回復が遅れたものと考えられます。空港の機能が回復し、関西の街にも影響がなかったことを外国人に上手く発信できなかったことが、今後の課題となりました。

日本人の伸びが高かったのは、外国人の戻りが悪かったことと関係があるかもしれません。LCCを中心に航空会社は空席連動の運賃設定をしていますので、予約の入りが悪かった便の運賃が安くなっていました。運賃が低くなったことで、旅行を思い立った日本人もいたのではないでしょうか?

実際、国際線は発着回数は+7%に対して旅客数は+5%でしたので、搭乗率は低下していたものと考えられます。

国内線はマイナス。伊丹・神戸に流出したか
国内線は旅客数がマイナス6%でした。関西三空港(関空+伊丹+神戸)ではプラス2%でしたので、関空の旅客が伊丹や神戸にシフトしたものと考えられます。被災後に予約を入れた人は、閉鎖中の関空を避けて伊丹や神戸の便を選んだとしてもおかしくはありません。



原油価格は8か月ぶりの安値圏
11月26日、原油価格が8か月ぶりの安値をつけ、直近のピークからは30%ほど下落した。航空機の燃料は原油から生成されるケロシンなので、航空各社が設定している燃油サーチャージが下がることが期待される。

原油価格が引き続き安値であったとき、サーチャージがどの程度になるのかを試算してみた。



現在のサーチャージは片道14,000円(欧米路線の場合)
まず、燃油サーチャージの決まり方から確認しておこう。日系の航空会社は、シンガポール市場での円建てケロシン価格に応じて、サーチャージの額を定めている。
サーチャージ
エリアごとに額は異なるが、欧米路線の場合は上表のとおりである。今のところ、2019年1月31日までの発券であれば片道14,000円が運賃に加算されることになっている。

このところの原油安でも、サーチャージは1ステージ下がるだけ
下図はこのところのケロシン価格(ドル建て)のチャートであるが、10月ごろに100ドル弱まで上がった後は下落に転じている。11月26日の価格は76.89ドルであるが、これを円換算すると8,688円になる。
ケロシン
この金額をサーチャージ金額を定める表に適応すると、サーチャージは片道10,500円である。現行よりも1ステージ低いところになるのて、多少ではあるが原油安の恩恵を受けることができる。

ちなみに、2017年6月ころは60ドルを下回っているが、逆オイルショックの影響である。このころは燃油サーチャージが廃止になることが期待されたが、結局は最も安いステージ(片道3,500円)に下がるにとどまった。

本格的に航空運賃が下がるためには、さらに原油価格が安くなる必要がありそうだ。


フィットネスで有名なRIZAP GROUPは赤字に転落
フィットネスジムで有名なRIZAP GROUPが2018年度の利益予想を当初の170億円の黒字から70億円の赤字へと、240億円も下方修正した。

この大幅な業績悪化には「負ののれん」が関わっているが、あまり聞きなれない単語だろう。この、「負ののれん」を使って会計上の利益を水増しする方法と、それによって、どれだけRIZAP GROUPが利益を作ってきたかについて解説する。



負ののれんとは?
企業を買収するにあたって、相手企業の純資産よりも安く買えたとき、その差額を「負ののれん」という。例えば、純資産が100億円の企業を80億円で買ったとすると、その差の20億円が「負ののれん」である。

ちなみに純資産とは、企業の総資産から総負債を差し引いたもので、企業の「正味の価値」といえるものだ。
バランスシート
このとき、会計ルールでは、100億円の価値がある企業を80億円で買収できたということで、「負ののれん」20億円を利益に計上できることになっている。これが、企業買収で利益をかさ上げできるからくりである。

帳簿と実態は異なる
ところが、この手法にはもちろん問題がある。本当に100億円の価値があるのなら、被買収企業の株主は80億円で売るはずがないのである。

ここでポイントは、純資産の100億円というのはあくまでも帳簿上の価値にすぎないということである。土地や建物の価値が帳簿価格よりも下落していたり、隠れた簿外が負債があったりして、実際の企業価値は低いということもあるのである。

下図の例であれば、帳簿上100億円あったはずの純資産が、実際には30億円になっている。
バランスシート2
もちろん、売り手の事情で割安で買収できることもあるが、普通は実態よりも安くなることはありえない。したがって、「負ののれん」を使って利益をかさ上げしても、早晩行き詰ってしまうのである。

利益の半分以上は、作られたものだった
さて、RIZAP GROUPはどれだけの利益を「負ののれん」で作っていたのだろうか?決算短信によると、2018年3月期においては、76億円の「負ののれん」が計上されている。当該年度の営業利益は136億円だから、その半分以上が作られた利益だといえる。

RIZAP GROUPは、プロ経営者として知られる松本晃氏を招き入れて経営を立て直すとのことである。松本氏はカルビーで会長を務め、経営を改善させた実績がある。赤字は今期限りとなるのか、それともずるずると衰退していくのか、RIZAPは重要な局面に立たされている。



東北の拠点 仙台空港のネットワークは?
インバウンドの波は東京・関西から全国に広がってきていますが、航空市場にも大きな変化をもたらしています。地方四市と呼ばれる札幌・仙台・広島・福岡の航空ネットワークの広がりを4回シリーズで追っていきます。

第2回は、東北の中心である仙台です。地方でも北海道や沖縄はリゾートとして人気ですが、東北はやや影が薄い印象があります。そんな東北ですが、航空路線の現状はどうなっているでしょうか?(2018年冬ダイヤ)



東アジアのたったの4都市のみ 東南アジア路線すらなかった
仙台の国際線ネットワークは、ソウル・上海・北京・台北の4都市のみです。東アジアの3か国のみということで、かなり貧弱なネットワークです。東南アジア路線が全くないというのも驚きです。しかも、北京便は上海経由ですので、実質的な直行便はとは言えません。
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便数はソウル線が週7便、上海線が週2便、台北線が週13便のみです。就航路線の便数もかなり少ないのが現状です。

リゾート路線が消滅 東アジアは増便も
手元にある2015年8月の時刻表と比較してみましょう。インバウンドブームの初期のころですが、
グアム:週2便
ホノルル:週4便
ソウル:週4便
上海:週2便
台北:週4便
でした。

夏季運航のホノルル線はさておき、グアム線がなくなってしまいました。北朝鮮のミサイル問題の影響でしょうか?

東アジア路線でのネットワーク拡大はありません。ソウル・台北と便数は増えていますので、インバウンドの恩恵が一応あったといえなくもありません。

東北に行くにも、仙台空港を使わない旅行者も多いか
東北に外国人が行っているという話はあまり聞かないので、便数も少ないものと予想していましたが、予想を下回る結果でした。やはり、雪や自然を求める外国人は北海道までいってしまうのでしょう。

また、東京までの距離が近いこともあって、東北が目的地でも仙台空港を利用しない人も多いと考えられます。この点でも、仙台空港は不利な条件に直面しています。実際、就航都市数や便数を考えても、東京から入国したほうが圧倒的に便利と言えます。

とはいえ、東アジア路線では一応の増便も見られますので、今後、オリンピックに向けて観光客を取り込めるかが陰ととなりそうです。

直近の日本経済はマイナス成長
11月14日に7~9月期のGDP速報値が発表されました。実質GDPは前期比で0.3%(年率1.2%)のマイナス成長となりました。

とはいえ、GDP統計は成長率だけを見ればいいものではありません。中身の良しあしが大切です。各項目の数値を確認しながら、直近の日本経済の現状を解説します。



消費のマイナスは一時的か?
さて、各部門の変化を見てみましょう。
GDP2018
まずは、民間部門からです。家計最終消費支出(個人消費)は0.1%の減少、住宅投資は0.6%の増加、設備投資は0.2%の減少でした。台風や地震の被害があった割に、個人消費の落ち込みは小さかったといえそうです。

政府部門は公的固定資本形成(公共事業)が大きなマイナスでした。これが、政府部門の足を引っ張っています。とはいえ、政府支出は政治的に決まるものであって、経済要因で増減するわけではありません。したがって、政府部門の増減は経済状況を捉えるうえでの重要性は大きくありません。

海外との取引ですが、輸出・輸入ともに大きくマイナスです。台風21号の影響で関空が閉鎖されたため、航空貨物の輸出入が完全に止まった影響が出ています。

輸出の落ち込みの方が大きい点が気になりますが、米中貿易戦争の影響が出始めたのかもしれません。中国は経済の減速感が強まっており、産業用ロボットや建設機械を中心として中国に輸出をしている企業の業績も悪化しつつあります。

在庫のマイナスは、来期の生産増
最後に注目しておきたいのが民間在庫変動です。統計上は在庫が積みあがった場合、在庫投資としてカウントされ、GDPを押し上げる要因になります。今回はマイナスになっていますので、統計上はGDPを押し下げています。

在庫の減少は後々の生産増加につながりますので、経済実態にとっては望ましいことです。ですから、在庫変動は必ずチェックしておくべき項目です。この項目はマイナスの方が良いという点に気を付けてください。

内訳はあまり悪くはない。来季、プラス成長に戻れればしばらくは安泰
全体としてみるとマイナス成長ではあったものの、内訳はあまり悪いわけではありません。災害要因で消費が落ち込んだことと、在庫の減少がマイナスに寄与しています。特に、在庫の減少は来季以降の生産増につながるものとしてプラスに評価できます。

投資と輸出のマイナスは気になりますが、10月~12月の統計がどのようになっているかが要注目です。これらが持ち直してくれば、もうしばらくは景気拡大期間が続くものと考えられます。

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