よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

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2018年12月

クリスマス・恵方巻と続くフードロスが発生
クリスマスケーキが大量に売れ残り、廃棄されたという記事が話題になりました。(クリスマスケーキ 大量廃棄の実態

フードロス(食品廃棄)は食べ物を粗末にしているということで、批判的に語られます。今回は、フードロスが発生している原因について、簡単な計算を使って考えてみましょう。
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実は、廃棄を前提とした方が儲かる
企業にとっても廃棄は無駄なので極力なくしたいはずですなのですが、実は、あえて余分に仕入れているのかもしれません。廃棄を前提として大量仕入れしたほうが儲かることがあるのか、次の状況を使って計算してみましょう。

状況を簡単にするために、原価を500円、売値を2000円とします。そして、たくさん売れるケースと、あまり売れないケースがランダムに発生するとしましょう。

ケース1(確率50%):100個売れる
ケース2(確率50%):150個売れる

このとき、企業は利益を最大にするために何個仕入れるでしょうか?

確実に廃棄が出ないようにするならば、仕入れは100個です。このとき、利益はかならず
売上-費用=100個*2000円-100個*500円=150000円です。

では、たくさん売れる場合に備えて、150個仕入れたらどうでしょう。このときは、ケースごとに利益が変わりますので期待値を取ります。

売上-費用=0.5*(150個*2000円)+0.5*(100個*2000円)-150個*500円=175000円です。

この計算からわかることは、売り切れが発生しないようにたくさん仕入れておくことが、儲けにつながるということです。

結局のことろ、フードロスが発生する原因は、需要を正確に読めないところにあります。売れる個数が分かっているのであれば、その分だけ仕入れればいいわけですから。

では、どうすればフードロスを減らせるのか?
営利企業に(もったいないから廃棄を出すななどと)倫理的なことを訴えても無駄ですから、別の方法を考えなければなりません。

過去の売り上げデータを使って、統計的に需要量を推定することができるようになりつつあります。ですから、AIを使って需要予測の精度を高めていけば、無駄な仕入れとそれによるフードロスは発生しにくくなるものと考えられます。

神戸空港の国際化は実現するか?
12月24日、関西3空港懇談会が開催され、関西国際空港・伊丹空港・神戸空港の役割分担について話し合われました。騒音問題を抱えて運用拡大に慎重な伊丹空港に対して、海上空港である神戸空港は機能的には24時間運用も可能です。

神戸市と兵庫県は神戸空港の国際化を主張しており、機能・政治の両面から言っても国際線が飛ぶようになるのは伊丹ではなく神戸が先になるものと考えられます。

では、神戸空港に国際線が就航するようになれば、関西全体にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?ここでは、需要が大きな近距離国際線が新たに就航するようになった場合について検討していきます。



最寄りの空港から出国できるようになる
神戸空港の国際化の最大のメリットは、利用者が近い空港を選べるようになることです。神戸以西に住んでいる(もしくは訪れる)人にとっては、近くにある神戸から出国できるのは明らかにプラスです。京阪間からであっても関空よりも神戸空港の方が近いので、時間の節約という恩恵を受けることができます。

また、観光客の関西全域への分散もメリットといえるでしょう。関西は2017年度には1100万人を突破しましたが、その多くは大阪市や京都市を訪れており、限られた地域への集中が著しい状況です。京都では市バスの混雑が問題になるなど、観光公害も発生しています。
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外国人が神戸空港からも入国できるようになれば、これまで目を向けられていなかった神戸や兵庫県に向かう観光客も出てくるものと考えられます。観光客が広域に分散すれば、新たに観光客が増える地域はもちろんのこと、観光客が過度に集中していた地域にとってもプラスといえます。

関空の長距離路線に悪影響か
デメリットはあまりないように見えますし、実際のところ、筆者も神戸空港の国際化には賛成です。ただし、見落としてはならないデメリットが1つあります。

神戸空港に近距離国際線が就航すると、関空の長距離国際線に悪影響が出える可能性があるのです。例えば、神戸空港にソウル(仁川)線が就航したとしましょう。東アジアのハブ空港であるソウルからは欧米の多くの都市に高頻度で飛行機が飛んでいますので、これまで関空から出入国していた旅客が、ソウル経由に移ってしまう可能性があります。

神戸以西に住んでいる人にとっては、わざわざ関空まで行って飛行機に乗るよりも、近場の神戸から出てソウル経由で目的地まで飛んだ方が便利ということもあるわけです。そうなると、ただでさえも貧弱な関空の長距離ネットワークに悪影響が出かねないというわけです。

とはいえ、関空から直行便が飛んでいる都市に向けては関空から出国する人が多いでしょうし、あまり気にするほどの問題ではないのかもしれません。

金融政策はなぜ景気に効くのか?
前回の記事(経済学は不景気を克服できるか?)では、景気を安定させる手法として金融政策があると述べました。では、金融政策で景気を良くするメカニズムは何なのでしょうか?

金融政策について簡単に説明した後に、景気を押し上げる仕組みについて解説します。



昔からの金利操作と、新しい貨幣供給量操作
金融政策は大きく分けて、金利操作貨幣供給量操作の2種類があります。

金利操作とは、短期金利を上げ下げすることで景気を安定させることを目指します。金利操作では、とりわけ、翌日物と呼ばれる1日だけの取引で使われる金利や、中央銀行に預け入れた時の金利が操作の対象となります。

貨幣供給量操作は、(厳密な表現ではありませんが、)銀行が貸し出しや投資に回せる資金の量を調整します。具体的には、銀行が日銀に預けている預金の量を増やしたり減らしたりします。

金を借りやすくして、投資と消費を増やす
では、これらの金融政策がどのようにして景気に効くのかについてですが、金利操作から考えましょう。

まず、短期金利(=変動金利)を下げれば直接的に借り入れがしやすくなります。利息の支払いが軽減されるわけですから、当たり前の話です。

短期の金利が下がれば長期金利(=固定金利)もつられて下がりますので、やはり借り入れがしやすくなります。

金を借りやすくなれば、企業は設備投資を増やすことができますし、個人も住宅の購入が容易になります。これによって、投資や消費という需要を喚起することで、景気を刺激するわけです。

銀行をカネ余りにして、貸し出しを増やす
とはいえ、この金利操作には問題点が1つあります。それは、金利はゼロ以下にはしにくいということです。

近年はマイナス金利政策も導入されつつありますが、銀行の預金や貸出金利はなかなかマイナスにはできません。そんなときに活用されるのが貨幣供給量操作で、量的金融緩和と呼ばれています。

これは、銀行が保有している国債や社債を買い入れることで、銀行に現金を供給するというものです。日銀が銀行から国債や社債を買い取ると、その代金は日銀にある各銀行の口座に振り込まれます。

この口座の預金には金利が付きませんので(量的緩和をするときは既に短期金利がゼロになっている)、銀行にとってみれば「死に金」です。そうすると、少しでも金利を取るために、どこかに貸し付けようとします

銀行の貸し出し姿勢が前向きになりますので、とりわけ信用力の低い中小企業やベンチャー企業にとっては資金調達がしやすくなります。そうすると金利操作の時と同様に、投資が増えて経済が活性化するわけです。

余談ではありますが、少し前に話題になったアパートローンの急増も、貸付先がなくて困った銀行が不動産に融資したということで、根っこは量的緩和にあるのです。

金融政策は、間接的な政策というところが弱点
このように、金利操作も貨幣供給量操作も投資や消費という需要を作り出すことで経済を活性化させることを目的としています。

金融政策は「間接的に」需要を増やす政策なので、政策効果が出るまでに時間がかかること、そして結局のところ金を借りてくれる人がいなければ効果が出ないという限界があります。

その点、財政政策であれば公共事業や減税によって直接的に需要を増やすので、確実かつ迅速に経済を刺激でいるというメリットがあります。財政の悪化という重大な欠陥もありますが。

2019年夏ダイヤでVanillaは運行終了
2019年10月26日までにPeachとVanillaの路線が統合され、Vanillaブランドでの運航が終了することになった。また、あわせて統合後の運行計画についても公表された。

Vanillaは東京(成田)を拠点として、13路線を運航しているが、これを原則としてPeachが引き継ぐ。路線によっては増減便や廃止になることもあるが、Vanilla路線がどのように増減便されるのかをまとめてみた。
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増減便が入り交じり、全体的に路線が再編される

東京(成田)発着では、那覇と石垣線は増便予定である。これらの路線はPeachでは運航しておらず、しかも札幌線と比べても便数が少なかったため、強化することとなったのだろう。

逆に、新千歳は減便となり、函館と香港は廃止となる。札幌新幹線の開通もあって、函館線は厳しかったのかもしれない。関空発着はすでに廃止されており、季節性が強い観光路線というのも苦戦した理由だろう。

大阪(関西)線では、奄美大島は現状維持、台北は増便となる。台北線はPeachも運航しており、これまでの3便から4便へと増やす。台湾からのインバウンドは引き続き好調なため、搭乗率が高い路線である。

その他の路線では、那覇-石垣線が廃止となる。この路線にはかつてスカイマークが就航したこともあったが、ANAやJALが対抗運賃を設定してきたために撤退に追いやられたことがある。Peach一時も参入したが、これも撤退している。今回も牙城として守りたいANAが親会社の立場で横やりを入れた可能性は否定できない。

戦後最長の景気回復
2012年12月から始まる景気回復は73ヶ月に達し、2019年1月には戦後最長を更新する。失業率も直近で2.4
%と歴史的な低水準である。

人手不足を原因として賃金も上昇し、ボーナスの平均支給額は前年比+3.4%の87万円(製造業平均、日経新聞2018年12月11日)となった。非正規社員の給料も上がっており、アルバイトの平均募集賃金は前年比+2.7%の1052円(日経新聞2018年12月13日)である。

このように、正規・非正規を問わず生活の改善は広く行きわたっているが、6年を超える景気回復の恩恵である。好景気の背景には経済政策(アベノミクス)の成功があるが、経済学によって不景気を克服することは可能なのだろうか?



経済政策で不景気に対応できる
経済学が提唱してきた経済政策とはどのようなものだろうか?これは、財政政策と金融政策に大きく分けることができる。

財政政策には、政府支出と減税の2種類がある。前者は政府が支出を増やすことによって、直接的に有効需要を作り出すものである。後者は国民の可処分所得を増やすことを通じて、消費を刺激する方法である。

金融政策は金利の引き下げによって借り入れを容易にし、投資や不動産の購入を活発化させるのが主眼である。

近年は金利がゼロにまで下がってしまったので、量的緩和政策が主な政策手段となった。金融機関が保有していた国債などを日銀が買い取ってしまうことで、その代金を貸し出しに回させようとするものである。それによって、投資が増えることが期待される。
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そもそも不景気というのは需要が不足している状態であるから、上記のような方法で消費や投資を増やせば簡単に解消できるものなのである。逆に言うと、好景気を持続させるのも簡単である。

景気回復は長くても、低成長
ところが、ことは単純ではない。2012年からのGDPの推移を見てみよう。
GDP
2012年7~9月期に497兆円で底を打った後、多少の波があるものの2018年7~9月期には532兆円まで増加した。6年間でトータル7.03%の成長である。年率に換算するとわずかに1.14%だ。

高度経済成長期であれば1年もかからずに達成できた成長を、今は6年かかってようやく実現しているのである。この成長率の低さが好景気を実感できない理由である。

それでは、経済政策で、成長の水準自体を引き上げることは可能なのだろうか?これはほとんどノーである。なぜなら、経済活動の水準は長期的に生産力に依存するからである。

効率よく生産する技術や、事務作業を省力化する仕組みは工学的な革新によってもたらされるものなので、経済学ではどうにかすることはできない。(研究開発を支援するような制度・政策を考案することは経済学の仕事ではあるが。)

景気の安定はできても、高度成長は実現できない
今回の話をまとめると、 「経済学は不景気を克服することはできる」という結論になる。ただし、「景気変動を緩やかにすることができる」がより正確な表現である。

ところが、長期的な成長率自体を引き上げることはほとんど不可能である。この意味では、経済学によって生活水準を急速に改善させることはできないし、せいぜい研究開発を促すような政策を考え出すのがいいところである。やはり、「平均成長率」を引き上げるためには、工学的な技術革新が不可欠なのである。

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