よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

2019年01月

2018年12月度も利用は順調
関西エアポートは2018年12月の利用状況を発表しました。発着回数・旅客数とも、3空港そろってプラスになりました。
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限られた発着枠の中で、伊丹・神戸もプラス
関空の国内線はギリギリプラスになりました。ANAの札幌線減便や、春秋航空とバニラの成田線撤退で減少が続いていた国内線ですが、下げ止まったのは朗報です。

伊丹と神戸は発着枠の規制で増便ができない中、旅客数が増加しました。伊丹は、全国各地へ向かう訪日外国人の需要を捉えました。神戸は、安価な運賃が売りのスカイマークが搭乗率を高めることで、増加傾向を維持しています。

国際線は日本人の伸びが大きい
国際線の旅客数は全体で7%の増加でした。これまで伸びを牽引してきたのは外国人でしたが、このところは日本人の伸びの方が大きくなっています。

一時期よりも円高が進んだこともあって、日本人の出国需要が増えています。また、LCCの就航が相次いでいることから、中四国や愛知といった、関西外からの集客も進んでいるようです。

日本政府は景気回復期間が過去最長になったと発表しましたが、緩やかとはいえ所得が伸びていることも海外旅行の増加に貢献しているものと考えられます。

トリクルダウン効果とは?
トリクルダウン効果をご存知でしょうか?これは新自由主義の論者が主張する効果で、「富裕層の拡大によって貧困層にも恩恵が及ぶ」ことを言います。

つまるところ、

1.富裕層がより豊かになる
2.富裕層の消費が増える
3.貧困層(=現業労働者)の賃金が増える

の流れを指すのがトリクルダウン効果です。2001年に小泉内閣の経済財政政策担当大臣に就任した竹中平蔵氏は、この理論に基づいて市場経済的な改革を推し進めました。

この改革は、日本の長期経済不況を打開したと称賛されることもあれば、はたまた貧富の格差を拡大したと批判されることもあり、その功罪については決着がついていません。

私が思うには、賞賛も非難も、その主張は共に正しいのです。なぜなら、「経済成長」と「所得格差拡大」は両立するからです。

さらに言えば、「貧困層が豊かになること」と「所得格差拡大」も両立しえます。この点について、考えていきましょう。



格差拡大と、貧困救済はトレードオフではない
まず図を使って、貧困層の底上げと所得格差拡大が両立することを確認しておきましょう。
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横軸に所得水準を、縦軸に人数を取っています。右に行くほど豊かで、左に行くほど貧しいことを示します。

なので、山が高ければそこに人々が集中していることを、逆に山の両側が広がっていれば所得格差が大きいことを意味します。

状態Aでは所得の低いところに人々が集まっていますので、格差は小さいものの全体的に貧しい社会です。状態Bでは山が右に移動したので社会は豊かになりましたが、所得格差も拡大しています。

このように、貧しい人の所得が増えながらも、所得格差が拡大するということは大いにあり得ることです。

これが可能なのは、全体のパイが拡大しているからです。ただし、拡大した部分の多くを富裕層が取っているので、貧困層に残るのは少しだけです。それでも、貧困層も得るものはあるわけです。

パイの大きさは一定という思考にはまってしまうと、「格差拡大=貧困層の所得減」という結論になってしまいます。しかし、経済は成長することができるので、格差拡大と貧困の緩和は同時に起こり得るのです。

つまり、誰かの得は誰かの損、というゼロサムの発想はのは経済を考えるときには必ずしも正しくないのです。

それは、望ましい変化なのか?
さて、今回は一見トレードオフの関係にあって両立しなさそうな事柄が両立できることを示しました。さらに考えなければならないことは、
・どのようなときに、トリクルダウン効果(所得拡大と貧困層の所得増の同時発生)が生じるのか?
・トリンクルダウン効果は望ましいことなのか?それとも良くないことなのか?
の2点です。

これらについては、次回以降の記事で検討していきたいと思います。

新ダイヤのポイントは?
1月23日、ANAとJALが2019年夏ダイヤの運行計画を発表しました。新規路線の開設や増減便など、いろいろな変更点がありますが、重要なところをまとめました。

路線が東京に偏りすぎており、インバウンドの取り込みに遅れを取っているなど、課題も見えてきました。今後改善すべき点についても指摘します。



ANAは東京中心が過ぎるダイヤ改正
ANAのダイヤ改正では、ホノルルへの超大型機A380投入が最大の目玉です。スカイマークを取り込む(結果的には取り込みに失敗したが)対価として押し付けられたA380を活用するため、日本人の定番旅行先であるハワイ路線に就航させます。

ファーストクラスを提供することで富裕層を取り込むとともに、超大型によるコストカットを活かしてエコノミークラスをより手ごろな価格で販売します。また、ファースト・ビジネス・プレエコ・エコノミーの4クラス制とすることで、幅広い旅客をターゲットにすることができます。
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国際線の新規路線として、成田からパース(オーストラリア)とチェンナイ(インド)に就航することで、国際線ネットワークを拡大します。

これらの路線に接続するため、成田-中部線を毎日2便から3便に増便します。国際線の座席を埋めるためには東京の需要では不足するため、中部圏から送客する必要があります。

国内線では、関空から札幌行きを毎日2便から4便に、宮古行きを毎日1便から2便にそれぞれ増便します。ただし、純粋な増便というよりも、機材調整のために減便していたものが元に戻っただけではあります。

なお、国内線の基幹空港である羽田・伊丹は発着枠の制限がありますので、これらの空港を発着する路線に大きな変更はありません。

JALは東京をメインとするも、関空にも力を入れる

JALは成田-シアトル線を開設するとともに、関空-ロンドン線にブリティッシュエアウェイズと共同事業で就航します。

共同事業とは、路線の収益と費用を両社で分担する方式のことをいいます。料金設定までもを共通化することで、あたかも1つの会社が運航しているかのような状況になります。

コードシェアが単なる座席の買取りであるのに対して、共同事業は収益とリスクをともに負担するという点に違いがあります。

機材の変更では、成田-バンクーバー・サンディエゴと関空-ロサンゼルスにSKY SUITEを投入します。これらの路線では、より快適に空の旅を楽しむことができるようになります。

国内線では、若干の増減便はあるものの、大きな変更はありません。

ANAはもっと「外を見る」べき
ANA・JALともに共通して、新機材を活用して路線を拡大します。ただし、その戦略には大きな違いがあり、ANAは東京路線に専念する一方、JALは関空線にも一応の力を入れています。

急増するインバウンドに最人気の観光地が大阪・京都であることを考えると、ANAは訪日需要を逃しています。訪日客の大半はアジアからですので、東京経由で大阪に向かうのは距離的なロスが大きいため、ANAは利用しにくい航空会社と言えるでしょう。

日本人にとっても、アジアやヨーロッパに行くのに東京経由は大回りになりますので、やはりANAは不便な選択肢です。海外の航空会社を利用して、より効率的に移動することが好まれるのではないかと思います。

これに対して、JALは関空路線にも一定の配慮を見せており、訪日客の取り込みを意識したダイヤ改正になっています。

日本人の出国数は頭打ちになる中、訪日客の急増は目を見張るものがあります。今後、成長を続けていくためには、「外を意識した」路線展開が求められるものと考えられます。

本当に、外国人を受け入れない方がいいのか?
入管法の改正案が2018年12月18日の国会で成立し、労働力として外国人を受け入れるように政策が大きく変更されました。この政策について、これまで本ブログでは批判的な立場から記事を書いてきました。


上記事で主張した通り、外国人受け入れは国益を損なう政策であることは間違いありません。ただ、世界全体という観点からの考察はまだ済んでいません。

よくよく考えてみると、世界全体にとってはプラスになる可能性もあります。経済学のツールを使って、経済全体の「厚生」の観点から政策を評価してみましょう。



日本人にとってはマイナスだが・・・
以前の記事で、外国人受け入れで得する人・損する人がどのような人たちであるかについて説明しました。

おさらいすると、安価な労働力が手に入ることから雇用主と株主にとってはプラスです。また、商品価格が低廉になることから、知的な業務を行う上位のサラリーマンにとってもプラスです。

これに対して、外国人と仕事を取り合うことになる非正規の人たちにとってはマイナスです。物販・製造・介護の分野に外国人が入ってくるので、これらの職種の賃金は下がってしまうためです。

低所得層の賃金低下と格差の拡大が深刻な問題になるため、日本の国益を損なうことが予想されます。これが、筆者が一貫して外国人受け入れに反対してきた理由です。

外国人には恩恵がある
ところが、もっと視野を広げてみると賛成すべき理由が見えてくるかもしれません。

まず、日本に入ってくる外国人にとっては必ずプラスです。母国にいるよりも訪日することを選んだわけですから(専門的には「顕示選好」という)、彼らにとっては確実にメリットがあります。

まら、日本に出稼ぎにきた人は仕送りをしますので、母国に残った家族にとっても恩恵があります。

外国人受け入れは、「国際貢献」である
さて、日本の政策転換によって得する人・損する人が出てくることは分かりましたが、結局のところ全体としてトータルではプラスマイナスどちらの方が大きいのでしょうか?

これについては、「厚生経済学の第一基本定理」から答えを知ることができます。この定理を簡単に言うと、「自由な交易を認めたときに実現する経済状態は最も効率的である」ということを示しています。

ここでは労働力の自由な交易、つまり、国境を越えた労働者の移動を認めることによって、全体としてはプラスになると解釈できるのです。

これが自由貿易推進やWTO(世界貿易機関)設立の理念になっているのですが、モノであれ、ヒトであれ、とにかく自由に国境を越えられるようにすることが、世界全体としてはメリットになるわけです。

とはいえ、当然国レベルではマイナスになることもありますし、今回の外国人受け入れも日本にとってはやめるべき政策です。もしも、国際貢献の一環として、日本で高賃金を得る機会を外国人に提供するというのであれば話は別ですが

ヘルシンキ線、今年の冬スタート!
フィンランド航空が、2019年冬ダイヤからヘルシンキ-新千歳線に就航すると発表しました。当面は冬ダイヤのみの季節運航で、便数も週2便のみになる予定です。

インバウンドの増加に伴って東南アジア路線が拡大していることは先の記事で書きましたが、ついにヨーロッパへの長距離路線がスタートすることになりました。今回の記事では、新たな路線の可能性について検討していきたいと思います。



北海道の雪は、ヨーロッパ人にとっても魅力的
ヨーロッパ人から見て、北海道はスキーリゾートとしての定評があります。ニセコやルスツといったスキー場の周囲は外国人向けのペンションが立ち並ぶようになっています。
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もちろん緯度が高いヨーロッパにもスキー場はありますが、島国の日本の方が雪が上質と評価されています。ですから、わざわざ熱心なスキーヤーは北海道まで足を伸ばしています。

日本人にとっては北海道といえば大自然のイメージですが、より雄大な自然を北欧やアルプスでみることができるので、この点についてはヨーロッパ人の関心は低いようです。

このような理由から、ヘルシンキ線は通年ではなく冬季のみの運航になったものと考えられます。

道内からの乗り継ぎ客獲得のため、ANAとコードシェアが必要
新千歳空港は北海道の拠点空港なので、利用者数の確保には、道内からどれだけ乗継旅客を獲得できるかがポイントになります。とりわけ、フィンランド航空はJALと同じワンワールド所属ですので、JALとの連携が必要といえるでしょう。

ところが、新千歳空港からの道内路線は稚内・女満別・根室中標津・釧路・函館があるものの、このうちJALが就航しているのは女満別のみです。これは、JAL系の北海道エアシステムは丘珠空港を拠点としているためです。

このように、JALとの連携は取りにくい航空ネットワークになっているので、ANAとのコードシェアが必要になるかもしれません。

近年は、ANAはスターアライアンス所属であるものの、アライアンスを超えた提携が行われるようになってきましたので、フィンランド航空がANAと組む可能性も否定できません。

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