よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

2019年03月

2019年2月の利用はプラスを維持
関西エアポートは、2019年2月分の利用状況を発表しました。関西三空港全体では発着回数が前年同期比で6%の増加、旅客数も同5%の増加でした。
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全体として旅客数が伸びているのは好材料ですが、関空の国内線がマイナスであることと、外国人の利用が頭打ちになりつつある点が気になります。以下では詳細を見ていきましょう。



国内線はマイナス 新路線で巻き返せるか?
関空の国内線旅客数は前年比で-1%とやや減少しました。このところはプラスとマイナスを行ったり来たりで、おおよそ横ばいの状況です。

国内線はもはやLCCが主流になっていますので、どれだけLCCに目を向けてもらえるかが肝心です。

国内線で第2ターミナルを利用するのはPeachのみですが、これに対して他社は不満を抱いています。ジェットスターは第2ターミナルを利用できるようになったら増便する旨の発言をしていますので、施設の拡張が必要でしょう。

とはいえ、このところはPeachが釧路・新潟へ、ジェットスターが高知・下地島(宮古)へと新路線を展開していますので、この勢いを維持できればプラス基調に戻るのではないかと思われます。

国際線は日本人は順調だが、外国人は頭打ち
国際線の旅客数は、全体では前年比7%のプラスでした。このうち、日本人は14%増と非常に大きく伸びました。台風の被害が大きかった昨年9月を除くと、おおむね10%前後の伸びを維持しています。

ひところは日本人(とくに若者)の海外旅行離れが話題になりましたが、現在は円安の一服感とテロの鎮静化によって出国意欲が戻っているようです。

反面、外国人は4%の伸びにとどまりました。かつては二ケタはもちろん、20%以上の成長を見せていましたが、ついに踊り場入りとなった模様です。

韓国と香港は人口に対する訪日率が20%近辺にもなっているため、これ以上の増加を期待するのは難しいのかもしれません。まだまだ伸びている中国や、訪日率が低い欧米を狙っていく必要がありそうです。

ジェットスターが下地島空港へ新規就航!
ジェットスター・ジャパンが、沖縄県の宮古島市にある下地島空港への路線を開設することを発表しました。成田線は2019年3月30日、関空線は7月3日からの運航です。

宮古島まで安くいけるようになるので期待は高まりますが、宮古島の空港といえば宮古空港なはずです。下地島空港はあまり聞きなれませんが、どのような空港なのでしょうか?
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宮古島へのアクセスがGood

まず、下地島とは何かについてですが、宮古島の西方にある面積9.54㎢の小さな島です。宮古島とは伊良部大橋でつながっていますので、事実上は陸続きとみることができます。
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この島にあるのが下地島空港ですが、もともとはパイロットの訓練のために作られた空港です。訓練に使うということもあって、滑走路は3000メートルと大型機にも対応できるようになっています。

これまで定期便の運航はありませんでしたが、3月30日に旅客ターミナルが完成するのに合わせてジェットスターが新路線を開設することになりました。

バスが飛行機に合わせて運行される
旅客便の就航に合わせて、公共交通によるアクセスも新たに整備されます。宮古協栄バス合資会社による「みやこ下地空港リゾート線」と、中央交通株式会社による「みやこ下地島エアポートライナー」の2路線が利用可能になります。

前者は宮古島市街へと向かう普通の乗り合いバスで、距離にもよりますが街中までおおよそ500円ほどの運賃です。後者は主要なホテルへのアクセスを担い、運賃は800円~1000円とやや高くなっています。

ともに、飛行機の発着に合わせて運行されるので、空港で待たされる心配はありません。詳細は空港のHPをご覧ください。


また、レンタカーも利用可能で、宮古島市街まではおよそ15km、25分の所要時間です。

LCCならではの低運賃がありがたい
これまで、東京からはANAやJALを利用すると最安でも10,000円はしましたが、ジェットスターは通常運賃で最安6,990円です。セールではさらに安くなることも期待できます。

関西の人にとっては、宮古島への直行便が通年で運航されるのがありがたいポイントです。現在は大手が夏季のみの季節運航ですので、それ以外の季節は那覇などを経由する必要がありました。

ジェットスターはこのところ国内線の路線拡大に熱心ですので、より一層のネットワーク拡大に期待したいところです。

エアチャイナで北京経由の旅行がおすすめ
エアチャイナ(中国国際航空)は北京をハブとする、中国のフラッグキャリアです。このエアチャイナの東南アジア行きが非常にお得なので紹介します。

まず、エアチャイナの概要からですが、日本には札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7都市に就航しています。中国では「国航」と呼ばれており、由緒正しい航空会社です。ロゴは不死鳥である鳳凰をモチーフとしています。

北京からは世界各国へネットワークが張り巡らされていますが、東南アジア方面ではシンガポール・ジャカルタ・バンコク・バリ・ホーチミン・マニラ・ヤンゴンと主要都市への便があります。
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北京まででもシンガポールまで行っても、運賃はほとんど同じ
さて、「乗り継ぎがおトク」とタイトルに書きましたが、どの程度お得なのでしょうか?まずはエコノミークラスから見てみましょう。
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6月2~8日に関空を出発して、9~15日に帰路につくスケジュールの運賃です。北京行き(上)は最安38,050円で、シンガポール行き(下)は同45,350円です。

大阪-北京は1,800km、北京-シンガポールは4,500kmであることを考えると、乗り継ぎ運賃の安さが際立ちます。

ちなみに、シンガポール航空の直行便の価格はこのようになっています。
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最安は48,130円なので、エアチャイナの方が安いことが分かります。

ビジネスはおトク度がマシマシ
続いてビジネスクラスを見てみましょう。
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北京までだと最安値は136,500円のところ、シンガポールなら106,450円です。なんと、たくさん乗ったほうが安くなっています!

これはかなり驚きであるとともに、とてもおトクだと言えるのではないでしょうか?しかも、エアチャイナのビジネスクラスはシンガポール航空よりもかなり安価です。
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シンガポール航空は208,130円~ですので、エアチャイナはおよそ半額です。

ビジネスクラスは本当におトク
このように、エアチャイナを乗り継ぎ利用して東南アジアへ向かうのは非常におトクだと言えるでしょう。もちろん、乗り継ぎがある分だけ所要時間は長くなります。

とはいえ、乗り継ぎ時間を利用して北京観光をしたい人や、マイレージを集めている人にとっては、直行便でないことはかえってメリットになりうるかもしれません。

なお、エアチャイナのビジネスは格安ですが、座席やサービスが悪いといったことは特にありません。むしろ、短距離便であっても、一品ずつ持ってきてくれるなど(ANAのようなプレートタイプではない)良心的な部類です。当然、座席もフルフラットです。

たくさん乗ると安くなる⁉
前回の記事では、遠くへ乗り継いだ方が安くなりうるという話をしました。まぁ、常識的にはたくさん乗るほどチケットは高くなるわけですが、そうではないところが航空業界の特殊なところです。


遠くまでにチケットを安く買って、経由地点から先の部分は不搭乗にするというテクニックが一部では流行っているようです。英語では”Hidden City”とも呼ばれています。(ただし、航空会社の規定に違反するため、搭乗拒否にあるリスクがある。)

今回は、このあたりの事情について経済学の理論を使いながら考えてみましょう。前回に引き続き、ヘルシンキを拠点とするフィンランド航空を例にして、「日本-フィンランド」よりも「日本-フィンランド-スペイン」の方が安くなる理由を検討します。

直行便市場は競争相手が少ない
まず、航空業界にかけられている規制について話します。国際線の運航は各国の主権にゆだねられていて、多くの場合、2国間の運航はその国の航空会社しかできないことになっています。

つまり、「日本-フィンランド」間の直行便は、日本とフィンランドの航空会社しか飛ばせないわけです。つまり、この路線を飛ばす権利があるのは、ANA・JAL・フィンランド航空の3社だけというわけです。専門的には寡占市場といいます。

したがって、便利なサービスである「直行便市場」では競争があまり起きず、価格が高止まりします。(このメカニズムは、携帯の通信料金が安くならないのと同じですね。)

もちろん、ソウル・上海・北京・ドバイ・パリ・ローマなどの諸都市で乗り継いでヘルシンキに至る「経由便市場」もありますが、これらは不便なため、十分な競争相手とは言えません。

まとめると、日本-フィンランド間では、便利なうえに競争相手が少ないので、運賃を高くすることができるのです。
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では、「日本-スペイン」はどうでしょうか?

先ほどと同様に、この路線に飛行機を飛ばせるのは、日本またはスペインの航空会社だけです。したがって、フィンランド航空はこの路線に就航することができません

なので、日本からスペインに移動する旅客を取り込みたければ、ヘルシンキを通る乗継便を提供するしかありません。乗継便は旅客にとっては不便なうえに時間もかかるので、高く売ることはできません。

さらに悪いことに、「乗継便市場」にはあらゆる航空会社が参入しています。例えば韓国の大韓航空やアシアナ航空は、「ソウル-日本」と「ソウル-スペイン」を飛ばしていますので、これらを組み合わせることで「日本-スペイン」の乗継便を提供することができます。

各国の航空会社がこのようにして「乗継便市場」には入ってきますので、競争が非常に激しくなります

したがって、旅客にとって不便なうえに競争相手が多いということで、運賃を非常に安くせざるをえなくなるわけです。
日本-スペイン
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このようにして「直行便市場」と「乗継便市場」をみてみると、たくさん乗る方が安くなる現象について理解できるかと思います。

一見不思議に見える現象も、経済学のレンズを通してみると原因がわかってきます。このあたりが経済学を勉強する面白さではないかと思っています。

どんな論文でも合格させてしまうハゲタカたち
ハゲタカジャーナルとかハゲタカ学会なるものが問題になっているようです。より堅い言い方をすると、粗悪雑誌・粗悪学会となります。

これらのハゲタカたちは、数万円の投稿代や参加費さえ払ってもらえれば、後は研究内容審査もせずに「合格」させていて、これが批判されているようです。

アカデミック外の人からしてみれば、「高い金をハゲタカに貢いでまで雑誌や学会に研究成果を出す意味はあるのか?」と感じるのではないでしょうか。

今回は大学事情に触れながら、一般向けにハゲタカ問題についてお話ししたいと思います。




ハゲタカといわれても、必要とされているから存在する
批判されようが何だろうが、需要があるからこそハゲタカビジネスが成り立ちます。では、どのような需要があるのでしょうか?

1.どうしても「成果」が欲しい
常識的に考えたとき研究成果とは、何か有用で社会の役に立つもののことを指しそうです。ところが、アカデミック界で成果というと、研究発表や論文掲載のことをいいます。

まともな学会であれば、程度が低い研究は発表させてもらえませんし、雑誌にも掲載してくれません。だからこそ、発表や掲載論文は評価されるのです。

ただし、みんながみんなレベルの高い研究をできるとは限りません。どれだけ努力をしてもいい研究ができない人もいるのです。

そういう研究者であっても成果は欲しいですから、審査をまともにすることなく合格を出してくれるハゲタカさんにお金を払ってしまいます。

2.成果がないと研究できない
かつては基礎的研究費と呼ばれる予算がたくさんありました。基礎的研究費とは、全員に対して無条件に支給される研究費のことを言います。なので、かつては研究費の獲得に困ることはあまりありませんでした。

ところが、近年は「成果の見込めないところには研究費をださない」という方針に変わったため、実績がない研究者は予算を付けてもらえなくなってしまいました。(ちなみに、選抜をして優秀な人にだけ支給される研究費のことを、競争的資金といいます。)

そうすると、「成果がない→研究費がない→成果がない」のループにはまってしまいます。こうなってはどうしようもないので、ハゲタカさんにお金を払って、成果を買う必要が出てくるのです。

3.成果がないと就職できない
これもまた近年深刻になっているポスドク・オーバードクター問題と関係しますが、成果が上がっていない人は正規雇用のポジションを得られなくなりました。就活では、研究成果を厳しくみられる時代になったのです。

若手の研究者は本来、長期的な視点から腰を据えて研究に励むべきですが、自分の将来がかかっているので悠長なことを言っていられません。これまた、ハゲタカさんにお金を出して成果を作らなければなりません。

ハゲタカ対策は、しっかりと成果をチェックすること
以上の3つの理由があって、コストはかかるけれどもハゲタカも必要とされています。ハゲタカ批判をしても、需要がある以上はなくなることはないでしょう。

このことの根本原因は、「研究の中身を見られないこと」にあります。研究費の配分にしても就活にしても、表面的に論文があることだけをチェックして、中身を読まないのが良くないのです。

粗悪なハゲタカを駆逐するためには、アカデミック界にいるわれわれが成果についてしっかりと考える必要があるのだと身に染みて反省するところです。

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