よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

院生向け

博士になったら学振をとろう
学振を取って博士に進学しようと考えている修士の学生は多いと思います。筆者も院生時代はそうでした。残念ながらDC1は取れませんでしたが、無事にDC2に採用されましたので、後輩たちに役立ててもらうために自分の経験について公開します。

「学振を取ったあとに待っている良いこと」もぜひお読みください!




3行要約
・学振に採用されると1000万円もの資金を得られる
・研究遂行能力が審査される
・将来科研費の応募にも役立つので、かならず学振に申請しよう

学振とは?

学振について噂程度しか知らない人のために、制度について簡単に説明します。学振とは、日本学術振興会の特別研究員のことです。特別研究員に採用されると、年間240万円の研究奨励金と最大150万円の研究費を受け取ることができます。

研究奨励金は実質的に給料で、使途は完全に自由ですし、所得税や住民税の課税対象にもなっています。研究費はその名の通り、実験設備や学会出張旅費など研究のために使用する資金です。

募集区分はDC1とDC2があり、応募資格はDC1はM2の学生、DC2は博士の学生です。任期はDC1で採用されるとD1~D3の3年間、DC2で採用されると採用後2年間です。

DC1であれば総額1000万円近く、DC2でも600~700万円程度の資金を手に入れることができますので、学生に対する支援としてはかなり充実しているものです。ですから、指導教員や先輩も学振に応募することを勧めてきますし、これを取得することを望む学生も多いのです。

応募書類の準備がかなり大変

そういう魅力的な制度ですので、ぜひ応募したいと思った方もいるでしょう。が、その応募書類がかなり大変なのです。分量は下記の通り、トータルA4で7枚分です。

これまでの研究状況 1.5枚
これからの研究計画 0.5枚
研究目的・内容 1枚

研究の特色・独創的な点 0.5枚
年次計画 1枚
人権の保護及び法令等の遵守への対応 0.5枚(該当者のみ)
研究成果等 1枚
研究者を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等 1枚


普段の研究と同時並行で進めなければなりませんの、準備期間はおよそ2か月は見ておくべきです。

研究成果は必要か?
もちろんあるに越したことはありませんが、筆者自身はなくても問題ないと思っています。筆者がDC2で通ったとき(応募はD1の5月)ですら、学会発表が1件と修士論文くらいしか実績はありませんでした。DC1であれば実績なしというのが普通でしょう。むしろ、M2の5月で実績ありの方が異常なくらいです。この点については学振の募集要項にも明記されていて、

〔審査方針〕 特別研究員-DC1、特別研究員-DC2
1.  学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。
2. 研究計画が具体的であり、優れていること。
3. 研究計画を遂行できる能力及び当該研究の準備状況が示されていること。

出典:平成31年度(2019年度)採用分募集要項

というように、研究計画を重視していることが明記されています。

研究はしておくべき
研究成果は必要ないと書いたところですが、研究はしておくべきです。なぜなら、「これまでの研究状況」を1.5枚も書かされるからです。1.5枚というと、ロングアブストラクトぐらいの分量ですから、一通りの研究は終わっている必要があります。最低限、研究ノートくらいはなければ、研究計画を書くことができません。

提出書類は先輩に見てもらえ
学振取得に有利と言われる研究室があります。それは、決してボスのコネなどではありません。そういった研究室では「学振は取るもの」として位置づけられていて、通るためのノウハウが先輩から後輩へと継承され続けているのです。

うちの研究室には学振を取った先輩がいないよ、という場合はどうしたらいいでしょうか?筆者の場合も研究室で学振第一号です。それでどうしたかというと、学部時代のサークルの先輩を頼りました。筆者は経済学ですが、頼った先輩は化学です。学振の書き方は学部ごとにそう変わるものではありません。専門外の人に見てもらったほうが、客観的に見てもらうこともできます。

サークルや部活でなくても、隣の研究室など、どこかから学振を取った先輩を見つけてきましょう。こう言ってはなんですが、研究能力がある学生ではなく、文書作成能力がある学生が勝つのです。

学振には必ず応募しよう
最後になりますが、学振の申請書を書くという経験は学位を取った後にも役立ちます。科研費の申請書は学振とほとんど同じです。研究者を続けていくなら科研費は避けて通れませんが、学振に応募することはこれのいい練習になるのです。

落ちても損はありませんから、博士に進学を予定している学生は、ぜひ頑張って書いてもらいたいと思います。

みなさまに大切なお土産を差し上げます。学振採用時の申請書です。私のホームページにありますので、下のリンクから飛んでください。

学振が持つステータス
金銭的な恩恵について書いた「その1」の続きです。今回は、学振を取っているというステータスの力についてお話ししたいと思います。筆者としては、金銭的なものよりも、むしろステータスの方が価値があるのではないかと感じています。

3行要約
・職歴として使え、就職に有利
・アカデミック外で社会人として扱われる
・精神的にも安定し、研究に専念できる


職歴としてカウントできる
学振を取っているといろいろと周囲の目が変わってきますが、特に役に立ったのは就活のときです。ファーストジョブを見つけるのは極めて大変で、長年ポスドクやOD(オーバードクター)にとどまらざるを得ないこともあります。

そんなときに、学振は「職歴」として履歴書に書けるので非常に有利です。筆者自身も博士取りたてで甲南大学に就職していますが、着任後に聞いたところでは学振は評価しているとのことでした。学振がなければ、おそらく面接にも呼んでもらえなかったでしょう。

学振の採択率は20%程度ですし、学振取得者の割合は全博士課程の学生に対して7%ぐらいしかありません。ですから、「学振取得者は研究能力がある」というシグナリングとして有効に機能するのです。

アカデミック外で社会人扱いになる
大学業界内であれば博士課程の学生はあたたかく見守ってもらえるのですが、一般社会では博士というのは希少種ですのであまり認知されていません。大学生の延長線上に見られることがほとんどです。悪くすれば、30手前になっても働いていない扱いで、むしろマイナスです。

ところが、学振を持っていれば肩書も「学術振興会 特別研究員」になりますし、給料も出ているので社会人として対外的に通用します。筆者は、業界内では学生、業界外では社会人として身分を使い分けていました。社会人として活動すれば、名刺交換もしやすくなりますし、人脈の構築にも有益です。

一部の人は、働きながら大学院に通う「社会人ドクター」と勘違いしていたようですが。。。

自己肯定感が増す
これはステータスではないのですが、学振を持っていると自己肯定感が増します。D3ともなればストレートでも27歳です。同級生たちは働き始めてとっくに5年目です。この状況はかなり焦ります。置いて行かれた感が強烈です。

こんな状況であっても、学振を持っていれば「自分はもう社会人」なんだと言い聞かせることができます。余分な不安を抱え込まずに済めば、精神的にも研究に専念することができます。

学振はメリットが盛りだくさん
ここまで2回に分けて学振を取ることのメリットについて書いてきました。これというのも、筆者自身がその恩恵をフルに受けてきただけに、後輩たちにもぜひ学振を狙ってほしいからです。

また、博士課程に興味がなかった修士の学生にも、学振を取って博士に進学してもらいたいからです。現状ではアカデミックに希望を持てず修士で去っていく人がほとんどです。しかし筆者としては、優秀な頭脳には大学に残ってもらい、研究者として世界を良くしていって欲しいのです。

もしも、学振に応募するうえで質問があればコメント欄に投稿してください。採択時の申請書を参考にしたい人は、このリンクの先に置いてありますのでご覧ください。


博士になったら学振をとろう
学振を取って博士に進学しようと考えている修士の学生は多いと思います。筆者も院生時代はそうでした。残念ながらDC1は取れませんでしたが、無事にDC2に採用されましたので、後輩たちに役立ててもらうために自分の経験について公開します。

3行要約
・学振に採用されると1000万円もの資金を得られる
・研究遂行能力が審査される
・将来科研費の応募にも役立つので、かならず学振に申請しよう


学振とは?

学振について噂程度しか知らない人のために、制度について簡単に説明します。学振とは、日本学術振興会の特別研究員のことです。特別研究員に採用されると、年間240万円の研究奨励金と最大150万円の研究費を受け取ることができます。

研究奨励金は実質的に給料で、使途は完全に自由ですし、所得税や住民税の課税対象にもなっています。研究費はその名の通り、実験設備や学会出張旅費など研究のために使用する資金です。

募集区分はDC1とDC2があり、応募資格はDC1はM2の学生、DC2は博士の学生です。任期はDC1で採用されるとD1~D3の3年間、DC2で採用されると採用後2年間です。

DC1であれば総額1000万円近く、DC2でも600~700万円程度の資金を手に入れることができますので、学生に対する支援としてはかなり充実しているものです。ですから、指導教員や先輩も学振に応募することを勧めてきますし、これを取得することを望む学生も多いのです。

応募書類の準備がかなり大変

そういう魅力的な制度ですので、ぜひ応募したいと思った方もいるでしょう。が、その応募書類がかなり大変なのです。分量は下記の通り、トータルA4で7枚分です。

これまでの研究状況 1.5枚
これからの研究計画 0.5枚
研究目的・内容 1枚

研究の特色・独創的な点 0.5枚
年次計画 1枚
人権の保護及び法令等の遵守への対応 0.5枚(該当者のみ)
研究成果等 1枚
研究者を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等 1枚


普段の研究と同時並行で進めなければなりませんの、準備期間はおよそ2か月は見ておくべきです。

研究成果は必要か?
もちろんあるに越したことはありませんが、筆者自身はなくても問題ないと思っています。筆者がDC2で通ったとき(応募はD1の5月)ですら、学会発表が1件と修士論文くらいしか実績はありませんでした。DC1であれば実績なしというのが普通でしょう。むしろ、M2の5月で実績ありの方が異常なくらいです。この点については学振の募集要項にも明記されていて、

〔審査方針〕 特別研究員-DC1、特別研究員-DC2
1.  学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。
2. 研究計画が具体的であり、優れていること。
3. 研究計画を遂行できる能力及び当該研究の準備状況が示されていること。

出典:平成31年度(2019年度)採用分募集要項

というように、研究計画を重視していることが明記されています。

研究はしておくべき
研究成果は必要ないと書いたところですが、研究はしておくべきです。なぜなら、「これまでの研究状況」を1.5枚も書かされるからです。1.5枚というと、ロングアブストラクトぐらいの分量ですから、一通りの研究は終わっている必要があります。最低限、研究ノートくらいはなければ、研究計画を書くことができません。

提出書類は先輩に見てもらえ
学振取得に有利と言われる研究室があります。それは、決してボスのコネなどではありません。そういった研究室では「学振は取るもの」として位置づけられていて、通るためのノウハウが先輩から後輩へと継承され続けているのです。

うちの研究室には学振を取った先輩がいないよ、という場合はどうしたらいいでしょうか?筆者の場合も研究室で学振第一号です。それでどうしたかというと、学部時代のサークルの先輩を頼りました。筆者は経済学ですが、頼った先輩は化学です。学振の書き方は学部ごとにそう変わるものではありません。専門外の人に見てもらったほうが、客観的に見てもらうこともできます。

サークルや部活でなくても、隣の研究室など、どこかから学振を取った先輩を見つけてきましょう。こう言ってはなんですが、研究能力がある学生ではなく、文書作成能力がある学生が勝つのです。

学振には必ず応募しよう
最後になりますが、学振の申請書を書くという経験は学位を取った後にも役立ちます。科研費の申請書は学振とほとんど同じです。研究者を続けていくなら科研費は避けて通れませんが、学振に応募することはこれのいい練習になるのです。

落ちても損はありませんから、博士に進学を予定している学生は、ぜひ頑張って書いてもらいたいと思います。

みなさまに大切なお土産を差し上げます。学振採用時の申請書がhttps://www.yotsuki-compass.com/work/にありますので、参考にしてください。

入院は易し。退院は難し。
誰が言い出したか、「入院するのは簡単だが、退院するのは難しい」のが大学院です。大学の居心地が良すぎて出ていく気がなくなってしまうのでしょう。

3行要約
・研究室に所属意識を
・学会発表は必ずすべし
・アカハラには要注意


研究室の学生になる
学部と一番違うのは、研究室所属になるというところです。もちろん大学所属ではありますが、アカデミック業界内では〇〇先生の学生として扱われます。筆者も院生時代は、指導教員はだれ?とよく聞かれたものです。先生は師匠であり、学生は弟子なのです。ちなみに、研究室の先輩は兄弟子と言われます。

そういうわけなので、研究室の居心地を極力よくしておく必要があります。研究室のイベントは面倒でも必ず参加しておきましょう。

学会発表は必ずしよう!
修士の学生でも学会で発表することができます。研究室によっては必須とされていませんが、何としても1度は学会発表しましょう。できれば国際学会が望ましい。

そうすると、貧乏学生にとって問題になるのは出張資金です。国際学会となると数十万円はかかります。そんなときには、まず先生に相談すべきです。自主的に学会発表に行きたがる学生を止める教員はいません。

科研費やらを融通してくれて旅費を出してくれるはずです。筆者も先生には大変お世話になり、毎年1回は海外で発表していました。シカゴまで連れて行ってもらったこともあります。

博士に進学するかどうかはさておき、英語でプレゼンした経験は社会人になっても必ず役に立ちます。

コアコースに全力を
ここは経済学研究科の人向けです。経済学の修士課程では、全世界共通の標準化された科目群があります。ミクロ経済学と計量経済学です。教科書も数種類しかないので、世界の院生と共通の土台が出来上がります。

これをコアコースと呼んでいますが、レベルがめちゃくちゃ難しいです。筆者も1日10時間ぐらい勉強しました。大学受験の時以上です。金を払ってなぜこんな苦労を・・・と思いましたが、何とか乗り切りました。

コアコースの成績が博士課程への進学要件になっていたり、研究室によっては必修になっていたりするので、決して手を抜かないようにしましょう。

アカハラには要注意
アカハラは大学院を退学する理由のNo.1です。筆者の友人にも、「研究成果をとにかく批判された」「一人だけ学会発表させてもらえなかった」などの被害にあって退学した人がいます。

加害者は教員とは限らず、兄弟子のこともあります。アカデミックでは結果を批判的に考察することや、研究対象について議論することは重要なことなのですが、これと人格否定の違いが分からない人がいるようです。だれだれの意見だから間違っているなどと主張する輩が一定数いるのですが、このような学生を指導するのが教員の役目のはず。しかし、教員の指導力が不十分で先輩からアカハラを受けるに至ることも多々あります。

アカハラ被害にあったら即、しかるべき部署に報告しましょう。今は厳しく対処する時代ですので、専門の職員が対応してくれるはずです。

とにかく、大学院は人間関係が濃いところなのです。

↑このページのトップヘ