IRにカジノが必要な理由
さて、ながながとカジノについて書いてきましたが、今回が最終回です。IRを誘致すると世界の要人・エリートが集まるので都市としての格が上がること、そのためには会議場とリゾートが必要であることを説明しました。実際のところカジノは本質的に必要ないですし、カジノがなくても上記の主目的は達成可能です。にもかかわらず、IRにはカジノが併設され、カジノを認めるための法案も作られています。IRにおいてカジノが果たす役割、そしてカジノが必要とされる理由とは何なのでしょうか?
3行要約
・カジノはIRの収益の中核
・カジノの収益を使って、IR全体を建設する
・カジノからは兆単位の税収が得られる
カジノは高収益
まずなによりも、収益力の大きさがカジノの特性です。どこのIRであってもカジノが占める面積は全体の数パーセントにすぎませんが、収益の大部分はカジノによって稼ぎ出されています。マカオのIRではカジノが全収益の80%を生み出しているとされています。狭い空間を効率的に使って巨額の収益を得るというのがカジノの特性なのです。この収益がIR事業者にとっても政府にとっても不可欠なのですが、その理由を見ていきましょう。
カジノの利益が投資の源泉
IR事業者のビジネスモデルは下図のようになっています。
出典:時事ドットコム
大規模なIRの建設費は全体で1兆円ほどですが、これを賄うのがカジノの収益です。巨額の収益が期待できることによって銀行から融資を受けやすくなったり、株式や債券で市場から資金調達をしやくすくなったりします。
逆に言うと、カジノがなければ資金が集まらないので、会議場やホテルといった施設を建設することができなくなります。
税収効果も抜群
そして、政府にとってもカジノは直接恩恵をもたらすものです。マカオの事例を紹介すると、とあるように、税収の大半はカジノから得ています。金額でいっても1.2兆円と巨額の財源です。ゲーミング(カジノ)税収は17.9%増の857億5070万パタカ(約1兆2037億円)で、予算執行率は119.3%。歳入に占めるゲーミング税の割合は79.8%。
出典:マカオ新聞(2018年1月2日)
観光に特化したマカオと違って、日本は大きな国なので主要な財源とすることはできませんが、それでも兆単位の財源となれば国庫を潤すことは間違いありません。
カジノは日本人にとっても有益なもの
カジノの収益性の高さは、IR事業者のとっても政府にとってもかなり魅力的なものです。仮に政府が真に誘致したいものが会議場やリゾート部分であったとしても、これらはカジノの利益を使って建設されるので、カジノ抜きでは実現できません。
また、財政赤字が積み重なっている日本にとって、カジノからの税収は非常に手に入れたいものです。もしも主たるカジノのプレーヤーが外国人になったとすれば、外国人の税負担で日本の財政赤字が改善するわけですから、日本人にとってはこの上なくありがたいものです。
以上6回にわたってIRについて書いてきました。筆者としては大阪がIRの誘致に成功して、世界から人々が集まる観光拠点に成長していってくれることを楽しみにしています。