よつき経済研究所

経済学者の森本裕です。専門は交通経済学と都市経済学です。神戸にある甲南大学で教員をしています。経済学のメインテーマである、価格=モノの値段についてコラムを書きます。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学ついても不定期で発信します。

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金融

JR東海は大幅安 JR東日本はそこそこの値下がり
2020年2月25日の日経平均株価は、前日比781円安の22,605円と急落しました。コロナウイルスの感染ががイタリアでも確認されたことから、リスクオフの動きとなりました。

今日は、JR3社の株価から読み取れる情報について書いていくことにします。まず、今日の値動きはJR東日本-2.92%、JR西日本-4.02%、JR東海-6.31%でした。JR東海の株価は大暴落を通り越して「崩落」という表現が適切なくらいに下げています。この値動きの差は何を表しているのでしょうか?
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予想通り、JR東海は新幹線に依存
まず、JR3社の収益構成を見てみましょう。
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JR東日本とJR西日本は新幹線が売り上げに占める割合が30%弱しかないのに対して、JR東海は70%近くもあります。JR東海は他の2社と比べて、収益が新幹線に偏っていることが分かります。

東海道新幹線は2020年のダイヤ改正で「のぞみ」が最大1時間12本になるというくらいに旅客数が多いので、JR東海の新幹線偏重は当然のことかもしれません。東北新幹線や山陽新幹線はLCCや高速バスに対抗するため割引切符を発売していますが、東海道新幹線は「ぷらっとこだま」くらいしか安く乗る方法はありません。「のぞみ」はほとんど定価販売で、EX早得を使えばオフピークの便が少々安くなる程度です。

見出し
収益構造を確認してみると、マーケットは新幹線に懸念をもっているのだということがよく分かります。

コロナウイルスが蔓延しても皆が通勤通学をやめないように、在来線の定期券利用客はそうそう減ることがありません。これに対して、新幹線の利用客は不急不要のことが多いため、利用を見合わせによる旅客減が生じます。

実際、ライブや大きなイベントは軒並み中止になってますので、遠方からの「追っかけ」客による利用がなくなっています。また、企業によっては出張は必要なものに限るという方針を打ち出していますので、業務利用も減少しています。

2月20日付で日経新聞が「東海道新幹線、休日利用者11%減 新型肺炎影響広がる」という記事を出していますが、マーケットは遅れて反応した形です。

ちなみに、JR西日本の値下がり率が大きいのは、在来線でインバウンドの恩恵を受けていたからと考えられます。関空アクセスや京都観光で外国人が多く利用していましたので、その需要がなくなるとかなりの減収になってしまいます。

また、売上に占める鉄道事業が57%ですので、43%は非鉄事業ということになりますが、ホテル運営に影響が出ることも懸念されています。

今日はマーケットの動きがかなり明瞭に出て面白かったので記事にしてみました。海千山千のトレーダーたちは、やはりよく考えて売買しているのだなと感心させられる値動きでした。

マーケットは堅調だが・・・
コロナウイルスが引き続き猛威を振るっている反面、アメリカ株は史上最高値を更新するなど、株式市場はもはやウイルス問題など忘れ去ってしまったかのようです。日本株も24,000円奪還を狙う水準ではありますが、本当に今は買い場なのでしょうか?

ちょうど1週間前の2月6日の記事「コロナウイルスで株価はどうなる?」では、23,000円までの調整があるのではないかということを書きました。1週間前の引け値は23,900円くらいでしたので、この間はほぼヨコヨコだったわけです。今日の引けは23,800円くらいなので、前記事の予想はあたりとも外れともいえないといったところでしょうか。
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今後の見通しですが、やはり中期的(この先1~2ヶ月)には23,000円までの調整はあるものと考えています。今朝9時ころに「中国での死者急増」の一報が入って先物に機械的な売りが出たように、ニュース一本で市場のムードが変わってくる可能性もあります。

また、企業業績自体もアメリカと比べても悪く、日経新聞が集計したところでは2019年4~12月の決算は全体として減益に転じたようです。日経平均のPERも14倍を超えている状況ですので、業績面からも下押しが懸念されます。

今後、実体経済への悪影響が明らかになってくると一気に下に向かいかねませんので、ポジションを小さくしておくか、プットオプションで保険をかけておくといった対策が必要だと思います。

株価は24,000近辺に急反発(2月6日)
中国の武漢を中心にコロナウイルスの感染が拡大しています。日本でも感染者が確認されており、これ以上の拡大を止めるのは難しいのではないかとも思われます。武漢では交通が完全に遮断され、市街との出入りが封鎖されています。

武漢は自動車を中心としてモノづくりの街ですので、経済活動への影響は避けられません。日本の企業は中国から部品を輸入していますので、サプライチェーンを通して日本の製造業にも悪影響が及びそうです。さらには、中国人の入国を制限する動きも出てきましたので、中国人がおよそ4分の1を占めるインバウンドが激減することで、観光業にも打撃が生じそうです。

このような先行きが不透明な経済情勢を受けて、日経平均株価が2月3日にかけて急落しました。24,000円を超えていたものが22,800円まで値下がりし、企業業績の悪化や景気後退をかなり織り込む展開となりました。
ところが、その後は急反発し、2月6日は500円以上の上昇となり一時、24,000円に接近しました。これは、前日の夕方に「コロナウイルスの治療薬が開発された」と中国のテレビが報じたことに起因します。

とはいえ、コロナウイルスが問題になる前の水準に全戻ししたのは行き過ぎではないかと筆者は考えます。実際に武漢の封鎖や中国人の入国制限は続いていますし、日本国内での感染者も30人を超えてきています。そうすると、やはり実体経済への悪影響は避けられないわけで、24,000円という株価は正当化するのは難しそうです。

2019年10-12月期の決算発表も続いていますが、業績は下方修正が上方修正を上回っている状況ですので、企業業績面からみても株価は調整局面を迎えるのではないでしょうか?2月中は23,000円近辺への値下がりに備えた方がよさそうです。急反発に慌てて買いで反応しないように気を付けたいものです。

前日比マイナス0.3%で買い入れ確率大
日銀のETF買い入れは、TOPIXが前日よりも一定以上下がったときに実施されるといわれていますが、権利落ちで株価が下落した場合でも買い入れはあるのでしょうか?

日銀は量的金融緩和の一環として、ETFを通じて年間6兆円程度の株式を買い入れています。この買い入れは、株価が前日よりも下がったときに行われる確率が高いのですが、前もって決められたラインがあるわけではありません。

日経予測ドットコム」さんが過去の事例から求めた買い入れ確率は下のようになっています。
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前場の株価が前日比で0.3%以上下げると買い入れ確率は3/4ほど、0.45%以上下げるとほぼ確実になっています。




実質下げなくても、ETF買い入れ
2018年9月26日は、3月期決算企業の中間配当の権利落ち日でした。この日の前場の下げ幅は0.70%でしたが、このうち0.67%は権利落ち分です。なので、実質的な下げは0.03%です。

もし、日銀が権利落ち分を考慮しているのであれば、買い入れは行われないレベルですが、実際には703億円の買い入れがおこなわれました。

このことから、日銀は権利落ちを除いた実質的な下げではなく、実際の下げに連動して買い入れをしている可能性が高いことが分かりました。日銀トレードをしている方も多いかと思いますが、ETF買い入れパターンを把握して相場で勝っていきましょう。

黒田総裁の異次元緩和とは何だったのか?
黒田総裁の金融緩和の目的と効果は?日銀の総裁は黒田東彦氏ですが、就任以来進めてきた金融政策とは何だったのでしょうか?

まず第1回は、これまでの金融政策を時系列で追っていきます。第2回は、それぞれの政策の目的と結果を検討します。第3回は、金融緩和が抱える副作用を分析したうえで、これから取るべき政策について提言します。




バズーカーから、戦力の逐次投入へ
前任の白川総裁の頃から金融緩和は実行されていましたが、2013年3月に総裁が黒田東彦氏になってから、金融政策は極めて緩和的になっています。日銀のホームページで公開されている資料を元に、

2014年4月4日(緩和第1弾)
・マネタリーベースを年間約60~70兆円増加させる
・長期国債の保有残高を年間50兆円増加させる
・ETFの保有残高を、年間1兆円増加させる

2014年10月31日(緩和第2弾)
・長期国債の保有残高を年間約80兆円増加させるETFの保有残高を、年間約1兆円増加させる
・ETFの保有残高を、年間3兆円増加させる

2016年1月29日(緩和第3弾)
・日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する

2016年7月29日(緩和第4弾)
・ETFの保有残高を、年間6兆円増加させる

2016年9月21日(修正1回目)
・10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う

2018年7月31日(修正2回目)
・10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は・・・ある程度変動しうるものとし・・・弾力的な買入れを実施する。

黒田総裁は初回の緩和時に、自らの政策を「異次元緩和」と評すとともに、全力を出し切ったことを明言しました。戦力の「逐次投入」はせず、できることはやりきったと発言したのです。

ところが、緩和の成果がなかなか上がらず、インフレ率が高まらなかったため、追加緩和=戦力の逐次投入を強いられることになります。ETFの購入は当初の6倍に、短期金利はマイナスにすることとなりました。2016年中頃までに、3回も政策を変更しています。

緩和の長期化と持久戦
金融緩和も3年が経過したころから、その「持続可能性」が問題になってきます。当初は2年間という短期決戦の予定でしたが、戦果が出なかったため、持久戦へと進んでしまったためです。

日本政府は1000兆円以上の国債を発行しているとはいえ、毎年80兆円もの買い入れを続ければ「売り切れ」になってしまいます。そこで、買い入れ額を調整する必要が出てきました。
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日銀の長期国債保有残高 単位:兆円

それが、2016年9月21日の修正1回目です。政策の目標を「量」から「金利」に戻したのです。80兆円の買い入れにはこだわらず、長期金利をゼロに張り付けることを目標としました。結果、買い入れ額は減少し、2017年度は国債保有残高が50兆円しか増えていません。

長期金利をゼロに張り付けることにしたものの、あまりにも市場機能を損なうということで、若干の柔軟性を持たせることにしたのが2018年7月31日の修正2回目です。0.2%程度までは金利の上昇を認めることとし、実体経済に応じて金利が変動できるようにしました。

なお、市場機能の回復だけではなく、銀行が国債で運用できるようにとの配慮も込められています。



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