よつき経済研究所

航空産業を専門に研究している経済学者の森本裕です。神戸にある甲南大学で教員をしています。このブログは火曜日と金曜日に更新しており、火曜日は「旅行に役立つ航空」について、金曜日は「経済学で身につける思考の技術」について記事を投稿します。また、大学教員ならではということで、今どきの学生気質や大学の裏事情についても不定期で発信します。

経済学に関心がある方は、ホームページ(https://yotsuki-compass.com/)にもお越しください。ツイッター(https://twitter.com/yotsuki_compass)でも最新ニュースに経済分析を加えています。

コラム

帯広で39度!
北海道の帯広で最高気温が39度に達するなど、異常なまでに気温が上昇している。今年の冬もかなりの暖冬で、雪不足でスキー場の営業期間も短縮された。

「平年よりも気温が高い」と毎年言われ続けているが、どのくらい気温が高くなったのかを調べてみた。




確実に気温は上がっている
気象庁のデータを使い、大阪の1969年~2019年の気温をグラフ化してみた。
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春(5月)・夏(8月)・秋(11月)・冬(2月)のどれを見ても、気温が上がり続けていることが分かる。近似曲線を描きこんでいるが、これも右上がりになっている。季節ごとに上がり方の差は大きくなく、どの季節もまんべんなく暖かくなっている。

この近似曲線の上がり方は平均して0.029度/年なので、50年に換算すると1.5度くらいである。

データを見ると1970年でも猛暑日が6日間あったから、昔の夏が涼しかったというのは間違いだろう。とはいえ、1.5度も違えば朝の寝苦しさも違うだろうし、雨と雪の境目になっていることも少なくないはずだ。

ちなみに、現在の「平年値」は1981年~2010年の30年平均なので、間を取って1995年頃の気温とすると、今ではおよそ0.4度は気温が高くなっている。なので、「平年よりも気温が高い」が連発するのも自然なことである。

IR産業展に行ってきました
大阪維新の会はIR(統合型リゾート)の誘致に熱心なため、大阪はIRの第一候補と目されています。ところが、関空の欧米路線の貧弱さがIR成功の足かせになるかもしれません。

2019年5月15・16日に開催された「統合型リゾート産業展」に出席し、IR事業者から聞いてきた話のまとめです。
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IRの成功は、国際会議の誘致がキモ
まず、大阪がIR誘致レースの先頭を走っているのは間違いありません。日経新聞は5月15日付で、IR事業者5社がコンセプト提案をする見通し手であると報じています。


IRというとカジノというイメージが強いですが、その大部分は会議場・ホテル・ショッピングセンターです。大規模な国際会議を開催してもらわなければ全体の稼働率が上がらないわけですが、ここで問題となるのが関空の路線網です。

関空はアジア向けは充実しているものの、欧米にはあまり飛行機が飛んでいません。実際、ニューヨークなどアメリカ東海岸には直行便がありません。ヨーロッパもイタリア路線はありませんし、ロンドン行きも週4便にとどまります。

このような状況では、インパクトのある大規模会議に来てもらうのは厳しいのではないかと思われます。

関空からの直行便の少なさは問題だが、後から路線が開設されるかも
この点について、IR産業展に出展している事業者の方に質問したところ、次のような答えが返ってきました。

・実際、関空から欧米主要都市への直行便がないのは問題だ
・東京からの乗継でも大きな支障はない
・航空会社との付き合いはあるので、路線の開設を要請する
・IR自体が航空需要を喚起するので、自然と新規就航が増えることが多い

というわけなので、関空の問題は心配半分ですが、航空需要の喚起とネットワーク拡充が好循環になるのではないかという期待も湧いてきます。

それでも、外国人を受け入れる理由
前回の記事、「外国人労働者の受け入れは、財政赤字を増やす」では、 単純労働を入れると財政にはマイナスになるということを説明しました。

それでも、政府は外国人受け入れを決定したのはなぜなのでしょうか?それは、外国人受け入れで得をする人たちがいるからにほかなりません。

では、誰が得をして、誰が損するのか、について考えてみましょう。




こんな人が得をする
今回の制度変更で新たに受け入れることになった外国人は、工場・店舗・介護施設といったところの現場で働く人たちです。賃金水準が低いため日本人が敬遠する職場で、人手不足が問題になっている職種です。

これらの現場に外国人を入れると低賃金の労働力が補完されることになりますので、雇用者は直接的に得をします。雇用者である企業にとって得ということは、所有者である株主にも恩恵が及びます。雇用者や株主ということですので、基本的には上流階級や富裕層にとってメリットがあると言えます。

また、低賃金を背景として安価にモノやサービスを購入し続けられるようになることで、一般消費者にとってもプラスです。消費は誰もがするので低所得者にもプラスですが、消費額が大きいほど恩恵も大きいので、やはり富裕層にとっての方がメリットが強いと言えます。

こんな人が損をする
逆に、損をするのは直接的に職を取り合う人たちです。つまり、主に非正規で働いているパート・アルバイトは外国人の流入によって賃金が下がってしまう蓋然性があります。

人手不足によってせっかく賃金が上がり始めたにもかかわらず、外国人が入ってくることで賃上げが起きなくなってしまうからです。

外国人と競合しない人たち、つまり、現場から離れたところで働いている本社部門の人たちや管理職はあまり影響を受けないでしょう。

このように考えると、非正規の人たちは消費の部分での恩恵が小さい一方で賃金が下がる可能性が高いわけですから、外国人受け入れで損をするという結論に至ります。

人手不足には、技術革新や創意工夫で対応を
このように、外国人の受け入れは得をする富裕層と損をする非正規労働者の利害が対立する問題ですが、政府は富裕層側の立場に立って政策を進めているようです。

金持ちの方が発言力が強いこと、大企業の団体である経団連が自民党をサポートしていることが理由と思われます。

しかし、人手不足は技術や工夫で解決していくべき問題です。非正規雇用の賃金を下落させ、格差を拡大させかねない外国人の受け入れは中止するべきです。

クリスマス・恵方巻と続くフードロスが発生
クリスマスケーキが大量に売れ残り、廃棄されたという記事が話題になりました。(クリスマスケーキ 大量廃棄の実態

フードロス(食品廃棄)は食べ物を粗末にしているということで、批判的に語られます。今回は、フードロスが発生している原因について、簡単な計算を使って考えてみましょう。
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実は、廃棄を前提とした方が儲かる
企業にとっても廃棄は無駄なので極力なくしたいはずですなのですが、実は、あえて余分に仕入れているのかもしれません。廃棄を前提として大量仕入れしたほうが儲かることがあるのか、次の状況を使って計算してみましょう。

状況を簡単にするために、原価を500円、売値を2000円とします。そして、たくさん売れるケースと、あまり売れないケースがランダムに発生するとしましょう。

ケース1(確率50%):100個売れる
ケース2(確率50%):150個売れる

このとき、企業は利益を最大にするために何個仕入れるでしょうか?

確実に廃棄が出ないようにするならば、仕入れは100個です。このとき、利益はかならず
売上-費用=100個*2000円-100個*500円=150000円です。

では、たくさん売れる場合に備えて、150個仕入れたらどうでしょう。このときは、ケースごとに利益が変わりますので期待値を取ります。

売上-費用=0.5*(150個*2000円)+0.5*(100個*2000円)-150個*500円=175000円です。

この計算からわかることは、売り切れが発生しないようにたくさん仕入れておくことが、儲けにつながるということです。

結局のことろ、フードロスが発生する原因は、需要を正確に読めないところにあります。売れる個数が分かっているのであれば、その分だけ仕入れればいいわけですから。

では、どうすればフードロスを減らせるのか?
営利企業に(もったいないから廃棄を出すななどと)倫理的なことを訴えても無駄ですから、別の方法を考えなければなりません。

過去の売り上げデータを使って、統計的に需要量を推定することができるようになりつつあります。ですから、AIを使って需要予測の精度を高めていけば、無駄な仕入れとそれによるフードロスは発生しにくくなるものと考えられます。

能力は価値である
資産と負債について考えるシリーズですが、ついに最終回です。これまで、
その1 貸借対照表編
その2 資産の価値はいくら?
その3 目に見えなくても価値はある
と3回にわたって検討してきました。

今回は、稼ぐ力としての人的資本について説明し、勉強することの収益性について計算してみます。勉強する意味を見出せない学生向けのコラムでもあるので、以前の記事を読んでいない人にも、単発ものとして読んでいただくこともできる記事です。



より多く稼ぐ能力は資産
人的資本を「より多く稼ぐ能力」だとするならば、割引現在価値によって評価できます。

特段のスキルが必要ない仕事の時給が1000円だとしましょう。もし、能力を生かして仕事をすることにより3000円の時給を得ることができるなら、この差が能力によってより多く稼げた部分です。

(なお、おおむね年間の労働時間は2000時間なので、時給3000円は年収600万円に相当します。)

資産の定義は、「現金の収入を増やすもの」でしたから、まさに能力は資産といえます。

人的資本の価値は1億円近く
さて、能力の価値がどのくらいなのかが問題ですが、生涯の勤務年数を40年としておきましょう。計算プロセスはやや複雑ですが、割引率を3%で見積もります。

(専門的には年金原価係数を使います。興味のある方はリンク先で計算してみてください。「年金額」に年あたりの収入の増加分、「年利率」に適当な割引率、「積み立て年数」にこれからの勤務年数を入力すればOKです。)

そうすると、9246万円という結果が出てきます。つまるところ、1時間当たり2000円=年あたり400万円を多く稼ぐ能力があるならば、その価値は9246万円と評価できるわけです。

能力を高めることのコスパは良好
この考え方を使うことで、ある企業に入社することや、何らかの資格を取ることの価値も計算できます。

例えば、賃金構造基本統計調査(2017年)によると看護師(女性)の平均年収は478万円です。この場合、看護師の資格を有することの価値は6425万円となります。

同様に保育士の平均年収は315万円なので、この資格の資産価値は2658万円と計算できます。

このように、資格の勉強をするなら事前に価値を把握することによって、取得するに値するものなのかを考えることもできます。また、大卒と高卒では平均年収が異なりますので、大卒になることの価値も計算できます。

4回の連載になりましたが、本当に書きたかったことは今回の人的資本についてです。能力を高めることで収入を増やせるならば、それは大きな資産価値になります。上で試算した金額の大きさに驚いた方もいるでしょう。

資格に限らず、勉強に励むきっかけになれば筆者としては幸いです。


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