「影」の地方都市
都市の力は地価に反映されます。路線価から都市の現状を読み解くシリーズも最終回です。ここまで、北海道のリゾート・インバウンドであふれる関西・一極集中の東京と光の面を見てきました。今回は最後に、影の面として衰退が止まらない地方都市に着目します。地方とはいっても広域の中心となる札幌・仙台・広島・福岡はミニ東京として人口が増えていますし、県庁所在地レベルでも衰退はゆっくりとしています。
本当にひどいのは人口が5万人もいない中小都市です。「市」ではあるけれども、鉄道も通らないような場所を取り上げます。
なお、路線価の対象となるのは一定以上の規模を有する都市のみですので、今回紹介する都市ですら、まだマシな状況であるということを書き加えておきます。
高知県四万十市 地方都市の中ではまだ恵まれているか?
四万十市は高知県の南東部にある人口35,000人の「市」です。かつては中村氏の城下町として栄え、区割りが碁盤になっていることから、小京都とも呼ばれています。しかし、人口の減少が止まらず、ピークからは15%ほど減っています。

中心部である市役所前の路線価の推移は、以下の通りです。
2013年 4.9万円
2014年 4.8万円
2015年 4.7万円
2016年 4.6万円
2017年 4.6万円
2018年 4.5万円(1平方メートルあたり)
前年比で2.2%マイナス、5年前比で8.2%マイナスとなっています。人口減少ということで、やはり地価は下落していますが、予想よりは下がっていませんでした。この後見る輪島市と比べると、まだ恵まれているという感想になります。
石川県輪島市 輪島塗があるも、衰退は止まらず
続いて石川県輪島市です。伝統工芸である輪島塗で有名ですが、金沢地裁の支部も置かれており、能登半島の中心でもある都市です。
中心とはいえ人口は27,000人しかいません。人口減少も著しく、直近5年間では10%も減っています。街中もスカスカになっており、ザ・地方都市ともいえる様相を呈しています。

さて、輪島市の中心部である国道249号線沿いの地価ですが、
2013年 5.7万円
2014年 5.2万円
2015年 4.9万円
2016年 4.8万円
2017年 4.6万円
2018年 4.4万円(1平方メートルあたり)
と勢いよく下落しています。前年比で4.4%、5年前比で22.8%もの値下がりです。ここまで下がってしまうと、もはや資産ということもできなさそうです。
輪島市は鉄道も通っておらず、インバウンドの取り込みも難しそうです。せっかくの輪島塗を活かせないのがもったいないところです。金沢からバスで2時間強ですので、うまく誘客できれば賑わいを取り戻せるかもしれません。